泥んこクイズスタート!

「ワタシのターン!」


 トップバッターは、やなせ姉だ。やなせ姉は観客に笑顔を送って手を振る。

 やはり絵になるな、と思った。これがクイズ番組で、嘉穂さんの身体が掛かっていなかったら、もっと盛り上がったろうに。


「選択問題です。枕草子で『春はあけぼの』ときて『冬はつとめて』と書かれていますが、時刻が早いのはどっち? Aがあけぼの、Bがつとめて」


「えっとぉ……」


「Aだと思えば赤いレスラーへ、Bなら青いレスラーを選択して下さい」


 まずはやなせ姉が、パラソルへ歩いて行く。


 その方角には、赤い水着のレスラーが。

 やなせ姉が、Aのレスラーに手を差し伸べる。「お願いしますね」

 赤いマスクウーマンは、やなせ姉をお姫様抱っこした。


「さあ、レスラーはどのプールに、来住選手を落とすのでしょう?」

 

 しばらく、泥のプールとマットをウロウロする。やがて、抱っこ状態のやなせ姉を投げ飛ばした。

 フワリとしたマットが、やなせ姉の前で待ち構えていた。


「あけぼのは日の出すぐから数分間、つとめては早朝を言います。あけぼのの方が早いんです」


 まずは、やなせ姉が正解する。


「では聖城先輩への問題。マクドナルドは最近、ライスをバンズ代わりにしたメニューが売られています。が、かつては、カレーライスを販売していた。○か×か?」

 

 迷うことなく赤のレスラーを選び、難なくクリアした。


「正解。九〇年代、カレーがメニューにありました」

 これは簡単すぎたか。

 

「よし、やるぞー」


 続いてはのんの出番である。

 ギャラリーに手を振って、のんが僕の前に立つ。


「小宮山のんに問題。次のうち、タイ王国に実在する島はどっち? A・アツイ島。B・サムイ島」


 口角を思いっきり下げて、のんが口をあんぐりと開けた。どうやら、かなり難易度が高かったらしい。

 

「のんさん、リラックスです!」

「こういうときは、自分のカンを頼りにした方がいいよ。のん」

「しっかりねー」


 三人からエールを送られ、のんは迷いを振り切る。

 勢いよく、青い水着のレスラーへダッシュしていった。

 レスラーは、のんを片手で軽々と持ち上げる。

 あっという間に、のんがマットへ沈んだ。


「おー」と、のんが高々と拳を振り上げる。


「その通り。正解はBのサムイ島。観光地としても有名です」


 続いて、またも聖城先輩の手番が回ってきた。


「問題。毎年八月八日は、『プチプチの日』とも呼ばれています。これは、気泡緩衝材の別名『プチプチ』の商標権を保有している会社が定めた記念日である。○か×か? ○なら赤、×なら青のレスラーに向かって下さい」


 何の迷いもなく、先輩は○の赤いレスラーを選択する。


「その通り、正解は○です」


 まだ勝負は付かない。

 

 続いて、やや緊張した面持ちで、湊がアキレス腱を伸ばす。

 

「問題。『オープン価格』とは、メーカーや輸入代理店など、小売店以外の側が設定した価格のことである。○か×か」


 助走を付けて、湊が少しずつ速度を上げていく。青レスラー、つまり×の選択肢へ向かう。


「お見事。正解は×です。オープン価格は『希望小売価格』。正確には小売店が設定した価格です」


 一度ボケたら失格という状況のためか、湊は無難に正解した。


 聖城先輩の手番に。


「さて、聖城選手の手番です。いかがでしょう、緊張していませんか?」


 さりげなく話題を振ってみる。

 早く始めろと言わんばかりに、聖城先輩は首を振った。

 先輩の視線が怖い。


「では、問題。日本ツインテール協会には、『帰ってきたウルトラマン』に登場した、『古代怪獣 ツインテール』も所属している。○か×か? ○なら赤の、×なら青のレスラーの元へどうぞ」


 中腰から起き上がり、先輩は、青いレスラーを選択した。

 もちろん正解だ。そんな記述はどこにもない。


「では、津田さんに問題です。フリーメイソンという秘密結社が存在するが、『フリーソーメン』という結社も存在する。○か×か?」

 

「えっとお……」


 顎に手を当てて、嘉穂さんは考え込んでしまった。


「○じゃないかな?」

「いや、そんなワケないだろ。素麺だぞ?」


 湊とのんが話し合う。


 散々悩んだ挙げ句、嘉穂さんが○を選択した。

 赤色のレスラーによって放り投げられた先は、白いマットの上である。


「正解。フリーソーメンは実在する組織です。ホームページだってあります」


 聖城先輩の番が回ってきた。

 

「問題。コピ・ルアクは『動物の排泄物から採取された世界一高いコーヒー』として、イグノーベル賞を授与されている。○か×か?」

 ○を選択肢、またも正解してしまう。


「さて、ようやく一巡しました。いまだ脱落者はナシ。ここで勝負が動くか?」


 二巡目がスタートし、また、やなせ姉の番となった。


「では、二問目ですが、来住選手、自信の程はいかがなものでしょう?」


 僕は、やなせ姉にインタビューを行う。


「お姉さんにお任せ!」


 やなせ姉が力こぶを見せて、自信があるとアピールした。


「行きます、問題。昭和初期の郵便局員は、盗難防止のため、拳銃の所持が許可されていた。○か×か?」


 困った顔のやなせ姉が、指をピストルの形にしたまま立ち尽くす。


 番組研が座るパラソルへと向かい、嘉穂さん達に意見を募る。

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