『ブタの貯金箱』の正式名称は?

「次は、写真問題です。写っているモノの名前を当ててくださいね」


『問題です。俗に言う「ブタの貯金箱」の正式名称を書いて下さい』


「あんなのにちゃんとした名前があるのかーっ?」


 これは、のんでもさすがに分からないらしい。

「BUTABAKO」と書いて、不正解をたたき出す。




 で、湊が書いた不正解の解答がこちら。



「卑しいだけのメス豚」



「はああああ!? 妙に生々しいわ!」

 

 最後に残ったのは、昌子姉さんの解答だけだ。

 

 昌子姉は、ずっとニヤニヤしている。

 フリップで顔を隠し、僕をチラチラ見ていた。

 

 何か企んでるな、と思いつつ、僕はフリップを覗き込んだ。


「おい……」


 姉さんの解答を見て、思わず吹き出してしまう。

 ああ、病気が出たな、と。


「書き終わりました福原昌子選手。さあ、見せてみろ」


 姉さんが、フリップを見せた。


『搾取されるのを待つだけの豚』



「はああああ!? てめえふざけんな!」


 姉さんの解答を見て、全員が吹き出す。


 僕は、ピコピコハンマーで姉さんの頭を軽く叩く。

 痛くない程度に、しかし、程良い音が鳴るくらい。

 来ると分かっていただけに、手慣れたものだ。

 嘉穂さんが書いた正解の解答が、こちらである。

 

 姉さんは、湊に負けず劣らずの「ボケ解答好き」なのである。



「くくく、くわあははははは! あああーあははあーっ!」



 口を押さえ、嘉穂さんがお腹を抱えている。


「もうだめ、ずっと我慢していたけど、げ、限界。はひひ、はひ、はひひひ……」


 周囲が引くくらい、嘉穂さんは大笑いした。

 大笑いした後、クスクスクスと、笑いを堪えている。お腹を押さえ、身もだえながら。


「大丈夫ですか、津田選手?」と問いかけても、嘉穂さんは首を振るだけ。


 しばらく収録をストップし、嘉穂さんのゲラ癖が収まるのを待つ。

 そういえばゲラだったな、嘉穂さんって。

 最後に、嘉穂さんの解答だ。


 彼女にバシッと決めてもらおうじゃないか。



『資本主義の豚』



「おまえもかあああああああああああ!」


 僕は思わず、嘉穂さんをピコハンで叩いてしまう。


「なんでだ? 間違ってないだろ?」


「そうだけどさぁ姉さん! 確かに資本主義が産んだ豚だけどさぁ!」


 嘉穂さんのゲラが収まるのを待って、次の問題へ。

 

「よろしいですね。では、次の問題。また写真が出ますので、その正式名称をお答えください」


 三分後、僕の合図と共に、やなせ姉が出題を再開した。

 

『問題。西部劇などで目にする、風に乗って転がる藁のような植物を何と言うでしょう?』

 

 のんの答えは「オカヒジキ」。なんとこれが正解、大正解である。


「知っていましたか、今の答え?」


「え……」と、自分でも信じられないという顔をする。


「何か、ヒジキっぽかったのだ」

「いや、でもすごいですよ。正解ですから」

「そうか、えへへぇ」


 頭を掻きながら、のんが照れる。

 続いては嘉穂さんの答え。


「タンブルウィード。津田さんも正解です」


 回転草、またの名をタンブルウィードと言う。

 湊の出した解答は「陸マリモ」。言いたいことは分かるが不正解。


「あの、姉さん……」


 昌子姉さんの出した答えは、「アルベド」である。


「それ、ミカンのスジの事じゃねーか! テメエも番組潰す気か!?」


 僕はプリプリと怒った。


「ちょ、晶太、何キレてるの?」


 僕のキレた意味が分からず、姉が動揺する。


「ウチがボケた解答が、次の問題の答えだった事があったんスよ」


 湊の悪夢再び。


「アルベド」は次の問題で出す予定だったのだ。また差し替えないと。


「そんなの黙ってたら済む話じゃん!」と、姉が逆ギレ。

「そういうワケにはいかないの!」と、僕も言い返す。


 またしても、嘉穂さんが笑い出した。

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