第32話 帰還②
「失礼します!」
「ん、やっときたか」
司令官はタバコを吹かしつつアーデルベルトが入ってくるのを見てそう呟く。
「アーデル・ベルトさん、怪我の方は大丈夫ですか?」
「あぁ……」
「大丈夫ではないです」
アデルとともに司令室にやって来た白衣の男はアデルの返答を遮るようにして言う。
「彼は出血が酷く。大量の輸血を行いました。また彼の腹部は戦闘によって少し裂けています! しばらくは安静にすべきです」
「そんなことはどうでもいい」
司令官は白い息を吐き出しながら彼の言葉を煙たがるように言い、続ける。
「アーデルベルト、お前はよくも二台しかなかった快装車両を壊してくれたな。アレを一台作るのにいくらかかると――」
「まぁまぁ、落ち着いて下さい。今回は完全にイレギュラーな事態だったんですから……ただ、大型のラフムへと突撃したことは頂けません。時間を稼ぐよう言ったのは確かですが、戦うべきではありませんでした」
「あれは……」
「もちろん、貴方の妻が奴によって殺されたことは調べましたので知っています。しかし、感情的になるのはやはりよくありません。そこでペナルティーを後日、与えます。よろしいですね?」
「……了解しました、それでは失礼します」
アーデルベルトは敬礼をして部屋を出る。
しばらくして副官が後ろから追いかけてくるとアデルを呼び止めた。
「そうそうアーデルベルトさん。これをお渡しするのを忘れてました」
「ファイブゼブン?」
「はい、護身用に念のため」
「ありがとうございす、では改めて失礼します」
アデルはそう言うと医務室へと戻った。
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