第31話 帰還①

「……うん?」


アーデルベルトは目を覚まし、ゆっくりと周囲を確認する。

鉄で囲まれた灰色の部屋に並べられたベッド。

周囲には他の兵士たちも横になっており、苦しそうにうめき声をあげている者や包帯を巻かれ静かに眠っている者など様々だ。


「アーデル・ベルトさん、ようやく目を覚ましましたか」

「ここは?」

「ここは列車の医療車両ですよ」

「あの後…俺が……気絶してから何があった? 教えてくれ」


アーデルベルトは苦しそうにしかしハッキリとそう言った。


「あの後、大型ラフムと交戦、奴らは何処かへと去りました。今は町へと帰っているところですので安心してもらって構いませんよ」

「そうか、俺と一緒に乗ってたフェイクはどんな感じだ?」

「フェイクさんですか……彼は重傷ですね。左腕の骨折、左眼球が破裂してしまってました。しかし、輸血を行い、今は落ち着いていますよ」

「そうか、クソ」


アデルは歯をくいしばり、ベッドを力強く殴り付けようとして自身の腕につけられていたはずの義手が外されていることに気がつく。


「俺の義手は、それから銃はどうした?」

「義手と銃の方は損傷が酷かったので現在、博士が修理を行っていますよ」「そうか」

「それと、大変申し上げにくいのですが、副官が目が覚めたらすぐに司令室まで来い。とのことです」

「そうか、わかった」


アーデルベルトはベッドから起き上がるとベッドから下り、ブーツをはきはじめる。

「アーデルベルトさん? 一体どこへ」

「副官のやつが言ったんだろ? 目を覚ましたら来いってな」

「しかし、まだ、貴方の怪我は――」

「別に今から戦いに行くってわけじゃないんだ。大丈夫だよ」

「分かりました。では行きましょう」

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