第21話 約束のために…。④

「こいつを閉めれば後は微調整だけじゃ」


薄すっらと声が聞こえてくる。

まぶしい、意識がはっきりとしない……。


「うっ……」

「おぉ、目が覚めたか、ふふっさすがわし時間通りじゃ!」


カッカッっと甲高い笑い声が聞こえる意識が戻り、ゆっくりと両目を開ける。


「おい、お前なにをした!!」


老人の方へと手を伸ばそうとして無かったはずの腕が生えていることに気が付く。


「これ……は?」

「ふっふっふっ……驚いたか、そいつはわしがつくったんじゃ!」


老人は胸を張り、自慢げに言った。

彼が作ったという機械の腕、二の腕の先端からはしっかりと残っていたはずの生身の部分も金属が覆い、それが左胸辺りまで広がっている。


「はぁ……」

「む、これの凄さがわかってないな、まだ試作品じゃがこれは最新技術とわしの最高の技術を取り入れた最新式の義手なんじゃ」


老人が説明を始めようとした時、どびらがゆっくりと開いた。


「目が覚めたんですね」 

「あぁ、で、これはなんなんだ?」

「いえ、せっかく戦って貰おうというのに片腕がないなんて不便でしょう? だからこれは我が軍のささやかなプレゼントですよ」


そう副官がいう。


「そんな下らんことはどうでもよい! 話をもどすぞ。まずはこの義手の主な機能についてじゃが人間の数十倍の腕力や握力を持つことじゃな、これならどうな銃も一切手振れなしで打てるぞ最大235キロまでならば持ち上げることができ、人工筋肉のバネから繰り出される拳の最高時速はなんと224キロじゃ。 まぁ生身部分がその速度に耐え切れんので制限(リミッター)はかけるがな、そしてわしがもっとも力を入れたのはなんといってもこれ『ロケットパンチ』じゃーーー!!!」

 

そう大きな声で老人は言った。

 

「は?」「なにをいってるこいつ」

「む?知らんのかいや知らんわけない全男のロマンじゃからな、スーパーロボットのアニメーションぐらいは見たじゃろ?」

「そん…」

「いや、言わなくてわかっておる」


「話をきけよじいさん」

「やっぱロケットパンチは男の子ロマンじゃよな。浪漫うむ、本当によい気分じゃカッカッカッ」


目をキラキラさせていう。


「いや、そんなものはいらん」

「そうです。そのような予算案は却下したはずですよ」


老人はしわくちゃの顔にさらにシワを寄せて声をあげる。


「なぜじゃ! どこがいけなかったフォルムか?色か?それとも大きさか?」


そういいながら老人は子供のようにオロオロとしている。


「まず俺はアニメーションなどは見ないからな……知らん」

「はーーあ、マジンガーとかグレートとかダイザーを知らないのか? なぁ、なぁ??」


老人は凄く驚いた様子で副官とアーデルベルトの顔を交互に見る。


「あぁ」

「知らないな」

「なんじゃ、それ。人生を損しておるぞ?」

「あの、そろそろ作戦がありますよ」

「そう、じゃったなまあ、とにかく性能が凄いことには変わらん。このまま出撃したところで――」

「ダメです。言うとおりにしてください」

「な……わかった、分かったよ。外せばいいんじゃろぉ……あぁ~男のロマンがぁ……」


明らかにガッカリした様子で老人はアーデルベルトから腕を取り外すと手首からしたの部分に手を加え始めた。


「おぉそうじゃった、カラーはどうする? わしの一押しは金じゃな。やはり神の拳は世界を救――」

「そんな目立つ迷彩はいらん 黒でいい」

「……まぁよいか、黒鉄も十分にカッコよいしな。ん、わかった。では30分ほど待って頂こうかの」

「10分でお願いします。、貴方の無断話で時間がないので」

「10分、10分そんなの」

「無理、とは言いませんよね?」

「わかった、分かったわ。やればいいんじゃろ」

「えぇ、それじゃあお願いしますよ」

「終わったらこやつも向かわせるから待っとれ」

「えぇ、あぁそれからですね」


副官は老人の耳元でなにかをしゃべると失礼しますとどこかへ行ってしまった。

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