第14話「心の穴を埋めるもの」

アーデルベルトが娘をつれて町を出て9年。

化け物たちと人間の抗争は続いていた。

新たなる武装兵器を開発したことによって今はまだギリギリ追いやっている状態ではあるがいつまで持つのかわからない。


そして今日はちょうどあの事件が起きた日。

アーデルベルトはアルマのことを思い出す…

あの約束と共に……


9年たった今もなお、あの事件のあの瞬間のことを忘れることができないでいた。

彼の目からにじみででてきた涙に気づいたペネシアが不思議そうにアーデルベルトの顔を眺めていた。


「どうしたのお父さん、大丈夫?」


ペネシアもあの場にいたが、ロッカーに隠れていた為にアルマの食われる瞬間は見てはいない。

手も病院で直してもらったと言ったし、アルマはお仕事を頑張っているからと伝えてある。

ペネシアだってもう中学生になる。流石に気付いているかもしれない。

が、聞かれていないのならば気付いていないのかもしれない。

いつか言おう言おうと思ってすでに9年。情けないものだ。


「いや、何でもないよ目に少しゴミが入っただけだよ」


アーデルベルトは目を擦り、頬笑みながら言う。


「そうだ、今日の誕生日プレゼント何がいい?」


あらかじめ欲しいものを聞いておき、当日に再び欲しいものを聞く。

欲しいものに変更がなければ隠して置いたそれをプレゼントする。

これはもう習慣のようなものだ。


「お人形さんがほしいな」

「そうか、それじゃあちゃんと用意しておいてやるからな」

「うん!」


ペネシアは頭を撫でられて嬉しそうに笑う。

その笑顔にアーデルベルトの心が少し和らいだ。


「あぁほらそろそろ学校に行かないと」

「まだ早いよ」

「そうかい?」

「そうだよ。学校はすぐそこなんだから」

「だが、今日はテストがあるんだろ? ちゃんと勉強をしなくては」

「大丈夫、ちゃんとやってるよ」

「そうか……」


アーデルベルトが微笑んだ時、彼の携帯が着信音を響かせた。

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