第13話「隠蔽/9年の日月」

とある将校がいた。


彼は新型の兵器の視察をするために国の兵器工場を訪れていた。

科学者と兵器の説明をする為に部屋で待ち合わせをしていたのだが、どうやら改築でもされていたのか彼は部屋への道を間違え、薄暗い部屋を訪れた。

ドアのロックが外れ、わずかに開いていたその扉が訪れる部屋かと思った将校はその部屋に入り、そこにある書類に目を通した。


「これは!!」

「君、こんなところで何をしているのかね?」

「 は、上官これは……」

「そうか……ソレを見てしまったのか。残念だ」

「何を……」

「これは君の権限では知ってはならないものだ」


上官は将校に向かってサイレンサーの付いた銃を突きつけると引き金を引いた。

勢いで壁に突き飛ばされ花開く赤い花。

それを上官は平然とした顔で眺めると白い手袋をはめていることを確認した後、彼の手にホルスターに納められた彼の銃に納められた弾丸を入り口へ向けて数発放った後、彼の手に握らせる。


「アーアー警備本部、聞こえるか? 現在軍の機密文書を無断で持ち出した兵を発見。抵抗のためやむを得ず処分した。繰り返す――」



そんな兵器工場の事件から9年の月日が流れ、様々な技術は凄まじい発展を遂げていた。


化け物たちを難なく殺せる武器が次々に開発され、化け物たちに武器が効かなくなることは無くなった。

しかし数が計り知れず現状、化け物はどれだけいるかわからない。

いくら殺してもそれを上回る早さでどんどん湧いてくるように見える。

だか、前のように勢いが無くなってきたのは事実だ。

それも不自然なほどに……。


アーデルベルトは機械仕掛けの左腕を手に入れると最愛の娘と共に別の国へ移住した。


暮らしている場所は強固な壁と重火器に囲まれ、寄ってくる化け物はいたとしてもその全てが国に入る前に駆除される。

ここで平和に暮らしていくつもりだった。

今日もいつも通りに平和な1日が過ぎるはずだった……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る