第8話「何処か間接が外れた日」

現在、街の東側はひどい状態だった。

逃げられた者もほとんどおらず、今は大きな建物の一室や地下室などにとじこもめられてしまっている。

化け物は逃げ惑う者たちを年配者だろうと子どもだろうと容赦なく食べた。

中には殺すことを楽しんでいるように見えるものもいた。


そんな現状でこの町を守る任を担う街の中央に位置する警察機関本部。

彼らは生き残った者からの連絡を受け、動いていた。


集まった軍人たちの表情は険しかったが、その表情はこれから向かう場所への緊張感だけではなかった。

装甲車に武器を積み込み、いざ出動というところで軍の上層部から各小隊長への召集命令が下った事による出鼻をくじかれた憤(いきどお)りもその表情には混じっていた。


しばらくしてブリーフィングから戻った各小隊長が悔しそうな顔をして戻ってくる。


そして彼らは口を揃えて言った『作戦は中止』と。


「そんな、冗談でしょう!」

「何故なんです!」

「納得いきません。人が助けを求めて待ってるんですよ?!」


命令に理解出来ない、納得のいかない各隊員たちは各々に声を上げる。


「何度もいうが、作戦は中止だ。用意したものを全て片付け、本日行う訓練に励め」


第35小隊の隊長も同じく自分の部下たちに言い聞かせるように言っていた。


「ちょっと待ってください。隊長」

「お前は……」

「はっ、自分は隊長と同じ第35小隊所属のスクアード・バイアランであります!」

「スクアード……確か半年ほどに入隊が決定した新人だな。それで、何の用だ?」

「はっ、自分は助けに行くべきであると進言したく思います」

「何故だ?」

「街の東エリアには現在、アーデルベルト・グロックス中隊長がいます」

「何?」

「兵装を身に付けての登山訓練で彼は息を切らすことなく行動し、また疲労によって足を滑らしてしまった私を軽々と引き上げてくれました!」

「自分もです。手足を拘束し、肺活量を鍛えるプールでの水中訓練の際、彼は30分もの間息継ぎすることなくこなしておりました。それどころか溺れかけていた私にいち早く気付き、助けてくれました!」


「自分もです」「自分も」とグロックス中隊長の部下にあたる各小隊の新人たちが手をあげて答える。


「針の穴を通すような正確な射撃能力に」「超人のごとく肺活量」「そして体力」「我ら部隊の今後のためにもグロックス中隊長の存在は必要であると進言したく思います!」


「それはなりませんねぇ~」


聞こえてくる声、建物の入り口の方へと兵士たちが視線を移すと数人の黒スーツの大柄な男。その間に立っていた痩せ顔をした男は口角の片側を上げて笑みを浮かべていた。


「あの、貴方は?」

「私は『オーサム・シューマック』。この国でさいっこうに偉いお方々。その使いの者だ」 


この世界での警察機関=軍隊という扱い。

この街の規模はそれほど大きくはなく、軍隊は5名の分隊が2つで構成された小隊10名が約150組。

それに加えて最大3つの各小隊に命令を下すオペレーター5名とこの街の軍の責任者である大隊長3名と総隊長1名が存在する。

また東西南北各地に存在する部署には約30名の軍人が存在する。

ちなみに約30名で中隊。約50名で大隊という扱いとなっている。

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