第7話「何処か間接が外れた日」

「パ……」

「んんっ……」

「パ…パ……」

「うっんっ……」

「パパ! パパ!!」

「――っ!!」


アーデルベルトは娘であるペネシアに呼ばれて目を覚ます。


「ペネシア?」

「よかったぁ~~ぱぱぁ~~!」

「ペネシア……ママはどうした?」

「隣にいるよ……でも全然起きないの」

「何!?」


ぼんやりとしていた意識が一気に覚醒し、アーデルベルトはひっくり返った視界で窓の外の様子を確かめる。


「……。」

「パパ……?」

「し、静かに」

「う、うん……」


どうやら近くに化物(あいつら)はいないようだ。と安堵の息を吐いて、ドアをゆっくりと開け、急いで後部座席の方へと回り込む。

フレームが曲がり開かなくなった後部座席の扉の窓を拳銃で軽く叩いて割れたガラスの下部を綺麗に割ると、扉を引っ張ってこじ開ける。


「アルマ、しっかりしてくれ……」


アーデルベルトは心配そうに声をかけながら気を失なっているアルマを助け出すと次にペネシアを助け出す。


「パパ……」

「よぉしもう大丈夫だそ、パパがついてるからな」

「うん、でもママは……」

「大丈夫さ。少し寝てるだけだよ、さぁパパにしっかり捕まって」

「うん」


アーデルベルトは助け出したペネシアを立たせると後部座席のリュックサックを背負い、アルマゆっくりと担ぎ上げるとそばにあった関係者用の鉄の扉を静かに引っ張って開けて中を確かめる。

明かりの灯ってはいるが薄暗い通路。

どうやら例の化け物はいないようだ。


「さぁペネシア早くおいで」

「うん」


扉の中へ先にペネシアを入れ、自分も中へと入るとゆっくりとアルマを床へと下ろす。

移動中にも感じたベットリとした生暖かいような冷たいような感触。

どうやらアルマは頭から血を流し、気を失ってしまっているようだ。


アーデルベルトはリュックサックに入っていた小型の懐中電灯を取りだすとボタンを押して明かりを点ける。

そして懐中電灯を口にくわえるとその明かりでカバンの中身を照らし、中身の確認を始める。


数枚のタオルとボトルに入った飲み物とパンの入った袋、そしてペネシア用のお菓子。


「くそっやっぱり医療道具はトランクの中か……」


アーデルベルトはアルマを抱え起こし、髪の毛に絡まったガラスの破片を取り除くとミネラルウォーターで軽く湿らせたタオルで頭から滴る血を拭い始める。

しかし細かなガラスの破片が残っている以上頭を締め付けるような真似は出来ない為せめても、と彼はアルマの前髪をかきあげると新しいタオルで血が垂れてこないように軽く巻いておく。


「アルマ、無事か? 目を開けてくれ…頼む…」

「…………。」

「アルマ、目を覚ましてくれアルマ……」

「…………。」

「ママ……起きて、ママ……」

「……ううん……」


反応があった。アーデルベルトとペネシアの二人は安心した顔で顔を見合わせると続けて声をかけ続けた。

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