ACT-1 ~Tower of Dead~ 3/3

「御機嫌よう、パープルトゥルースの皆様」


イリスは、彼らの脇まで歩み寄り、笑顔で挨拶した。

無論、まともに返礼出来る者などおらず、全員顔が引きつっている。


「とりあえず、生還出来たことだけでも、ご報告しておこうと思いまして」


「あ、ああ、それは……何より」


「あなた方は、今月から北西のエルフィリアに向かわれるご予定だったと、

 先日お話されておりましたね?」


「え、ええ……」


「私も、兄の件を両親に報告する必要がありますので、よろしければ現地で

 またお会いいたしましょう」


「へ、へぇっ?」


「私の父は、エルフィリア全地域を司っている領主です。

 エルフィリアに冒険者の方々が参られた際は、必ず謁見を

 お願いしておりますので、その際は何卒――」


「ひ、ひぃっ?!」


ライナスをはじめ、パープルトゥースの一同は、全員怯えて椅子からずり落ちた。

小首を傾げるイリスの背後では、物凄くわざとらしい笑みを浮かべたリュウヤとモトスが、五人を睨みつけていた。




いつの時代も、冒険者は金と名誉、探究心に突き動かされる。


大陸オーデンスの一王国キングダム・ブランディスの主要都市「ハブラム」にも、そういった輩が数多く集まってくる。

各々の欲望・目的の形は実に様々だが、共通していることが一つある。


それは――どうしてもここでやりたい「何か」がある、という事。


二十年の時を呑み込み、今も尚君臨する無秩序な暗黒空間「地下迷宮」。


その謎を解かんとして、今も尚、新たな志に燃える冒険者達が訪れる。



そして、そんな彼らとはちょっとだけ違った目的の者達も――


迷宮求深者 -Deep Diver-

ACT-1 ~Tower of Dead~  END.

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