2
「遠慮する。僕は今、しっぴつで忙しいんだ。あとにしてくれ。」
「手紙なんてあとでエエやろぉーもぉー!」
「じゃま。」
あのね。
僕は、生まれた村でずっと、蝋燭の明かりしかない、とてもジメジメとした場所で、なにをするにも一人では許してもらえず、いつも顔には重たい仮面をつけられて、閉じ込められていました。毎日毎日、やせ細って病気みたいな人たちが僕のところに来て、柵越しにお祈りをするけれど、僕にはなんの力もないし、食べきれない量の豪華な食事を捧げれられるけれど、それは僕よりも他の人が食べるべきだし、僕はもっと他のものが欲しかった。とても息苦しい毎日で、目眩に倒れそうになったとき、あの重たい重たい仮面を、雅が外してくれたんです。ずっと、誰も知らない場所に閉じ込められていた僕を、見つけ出して連れ出して、暖かな場所へと連れて行ってくれたんです。新鮮な空気が、嗅いだことのない匂いが、蝋燭以外の輝きが、いっぱい入り込んできました。あのとき、あの雅の顔を見たときの、あの気持ち。あれは、いったいなんなのでしょうか。
「なぁ、読んでもエエ?」
「だめ。」
「なんでぇなぁ。」
「なんとなく。」
それまで僕の毎日は、時計の針で決まっていました。長い針が一周したら、行動を変えて、短い針が二周したら、一日が終わって。その針の動きが、一分でも一時間でも十時間でも関係なく、気付くこともなかったでしょう。
でも、雅に救い出されたあの日から、それは変わりました。僕は、一日が二十四時間であることを、一時間が六十分であることを知りました。そうして、その短さも。
雅と過ごす一日は、ビックリするくらい短いんです。
何故なのでしょうか。
「じゃあさ、俺も書いていい?」
「え。」
「佐助さんに、手紙。」
僕はまだ、よくわからないことでたくさんです。
でも、ただひとつわかるのは。それは。
雅と、ずっと一緒にいたいということ。
雅もそうならいいのにと、思うこと、です。
内緒ですよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます