【8 ちょこのおまけはめしつかい】

 拝啓、主様へ。


 お元気ですか。僕は元気です。あ、やっぱりちょっと元気じゃないです。最近とってもバタバタしていて、疲れました。あと、お腹がすごく空くし、手足がキシキシと痛いです。最近。チノメアのジャージも、いつのまにか七分丈になっているし。雅になにかしただろうって言っても、知らないふりをするんです。でもジャージが突然変異を起こすわけないし。……ない、ですよね?


「鷹ぁ、なにしとるん?」

「てがみ。あるじさまに。」

「ゲッ。」

「げ?」


 いつもいつも手紙を書こうと思っていたのですが、いつの間にか一年も経っていました。びっくりですね。僕がレイレイを出たのも、一年前だと思うと、またさらにビックリです。ビックリと言ったら、雅がキモロン毛を卒業しました。キモショートです。そう呼んだら、デコピンをされました。とてもいたい。

 オムライスに絵を描いたり、レイレイのチョコをたくさん食べて、二人で虫歯になりました。それもいたい。


「手紙はエエけど、佐助さんに住所は教えんといてなぁ。」

「まかせろ。」


 最近、引っ越しをしました。僕の部屋がちゃんとあるマンション。場所は内緒です。

 色々便利で、でも一番うれしかったのが、寝室です。別々の部屋だけれど、僕と雅の寝室を挟む壁は襖で、開けると一つの部屋になるんです。お昼寝とか、久しぶりに帰ってきたときとかは、一緒に寝れるようになったんですよ。へへーん。

 あ、あとね、レイレイのすごく近くのマンションなんです。最近建ったばかりの。一番上の部屋で、見晴らしが素敵なんですよ。今度遊びにきてください。歩いてすぐです。


「そうだ、来週からまた帰れない日が続くと思うわぁ。」

「……。」

「その顔やめぇい。しゃーないやろ。恨むんなら佐助さん恨んでぇな。」


 そうそう。主様、僕は怒っているんですよ。ぷんぷん。

 主様が『やちょうのかいのくみちょう』になってすぐに辞めて、雅を『やちょうのかいのくみちょう』にしたせいで、雅はいつも大変で、帰って来るのが遅いし、帰ってこないときもあるし、とにかく一緒に遊園地も行けないんです。主様働いてください。

なんか、『わかがしら』っていうのになった鶴丸ってひとが、いつも雅といっしょにいるんです。雅はその鶴丸って人をすごく褒めるんですけど、僕はそんなによいものだとは思えないなぁ。主様も、そう思いませんか?



「だから、ほら。」

「?」

「甘えるなら今のうちやで。」


 そういえば、主様、せっかくレイレイに帰ってこれたのに、社長から避けらえれていると聞きました。大丈夫です。たしかに主様、煙草臭くて口調も目つきも悪くて、言葉とか怖いけど、でも、主様にはほら、えっと、……あの、その……と、とにかく大丈夫です!社長はすぐに主様と仲良しになってくれますよ!なってくれるはずです!そう、社長のことだから、きっと主様をしょんぼりさせるのを見て楽しんでいるんです。うん。社長と主様のそういうとこ、とってもよく似ていると思います、僕。

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