「……ったく、アイツ、通信が俺だけになった途端切りやがった。」

「か、頭、」

「もう我慢ならん。俺の役目は全うしたんだ、文句は言わせない。今日こそきちんと顔合わせて話してもらうぞ。お前等、あとは勝手にしろ。」

 佐助は立ち上がり、吸っていた煙草を踏み消して、雅に通信機を投げ渡す。

「鷹は、お前が攫ってきたあの日から、俺が大事に大事に育ててきたんだ。……わかってるよ、な?雅チャン。」

「!」

 寒気と鳥肌を瞬時に呼び起こす笑顔。うん、やっぱり佐助は佐助だ。

 去っていく背中を、(本当にきちんと去っていったのか確認するために)見えなくなるまで見送って、ようやく緊張の糸が切れる。少し前まで諦めていた全てがきちんと手の中にあることを、今一度強く噛み締めた。

「……初めてや。」

「?」

「神様が、俺に選びきれんくらいたくさんの道を用意してくれたの。」

 いつも、険しくて冷たい、道とも呼べないような場所を、独りで歩いていた。何度も歩くのを諦めたし、何度も立ち止まった。

 でも、ここまで来たんだ。

「僕は、神様じゃないけど、」

「うん?」

「知ってるよ。」

 鷹の小さな手が、雅の頭を撫でる。


「がんばったね。今まで、ずっと。神様にも、届いちゃうくらい、雅はがんばったよ。」


 今までのぶんが全て現れたみたいに、たくさんの素敵な道が伸びている。

 この先ずっと遊んで暮らしていくことも、危険な世界から抜け出すことも、行きたい場所でやりたいことをやることも、きっと、なにもかも可能だ。

 けれど。

「ありがとう、な。」

「ん。」

「俺はいつも、お前に救われてるんや。」

 この道を歩いてきたから。

 そこにいた鷹に出会うことが出来た。

「お前さえいたら、もう、充分過ぎるわ。」

 険しかった。ツラかった。でも、神様は雅に、一番素敵な道を、歩ませてくれていたんだ。

 嫌ってなんか、いなかったんだ。

「お前に出会えて、本当に良かった。」

 だから。

「なぁ、鷹。」

 だから……―――

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