第15話母さん

「呑気にこんなところで誰と待ち合わせしてたんだ?」

「明日雨こいつ付き合ってるんだよ」



 二人の顔は嫉妬にあふれていた。 俺はそのことをずっと否定するが信じてくれない。

「本当に違うんだって! てかとりあえず離してくれ!」

 そういうとすぐに離してくれた。 俺は話を変えようと頑張る。

「そんなことより、 病院いったのか?」



 二人は顔を合わせて言う。

「行ったよな!」

「な!」

(本当にこの二人いつの間にこんなに仲良くなったんだ?)



 クラスメイトのことを聞くとため息をついた。

「はぁ......クラスメイトはもう退院したらしい、 まああの担任だっけ? あの人はまだいたから少しばかり話して帰ってきた」

「そしたら公園で、 たそがれてたお前を見つけたってわけだ! な明日雨」

「だな」



 帰って来るのが早かったから俺の後をつけてたのかと思った。 そのことは心の底に置いといて、 先生と何を話したんだ? そのことは後でいいと思いこれから何をするか聞く。

「それで今からどこに行くんだ?」



 二人の様子を見る限り何も決めてないらしい。

「あそこだよな」

「ああ、 あそこだ」

(いやどこだよ!)

「あそこって?」



 すると矢代が指で空を指す。

「あそこに行く」

(まじかよ!)

「......まだ決まってないんだろ?」



 そういうと二人は焦っている様子だ、 図星だ。 俺はそれを見て帰ろうとする。

「すまんが俺は用があるから帰る」



 そういい俺は歩き出したが二人が止める。

「いや! まて!」



 止める矢代を無視する。

「俺は今日は帰るぞ、 親にも言ってあるし」



 明日雨も止めにかかる。 俺は明日雨に帰るように説得する。

「お前も帰らなくてもいいのか? 昨日電話もしてなさそうだし、 親が心配してるぞ」


 そう言い止めるのをやめて考える。 そして答えが出たのか歩き出した。

「すまん! 矢代俺も帰るわ」



 おそらく矢代は一人でいるのが寂しいのだろう、 だから俺らを家に泊めたり今だって帰るのを阻止しようとしている。

「待ってくれよー!」



 可哀想な矢代を気にせず駅に向かう。 明日雨は足を止めて矢代に一言。

「なら夜みんなで電話しよう、 それなら寂しくないだろ?」

 いつもの矢代に戻った。

(ふっ! ちょろい!」

 その時の明日雨は悪役の顔つきだった。


---


 その後矢代が追いかけてくることはなかった。 俺たち二人はそれぞれ違う電車に乗り家に帰る。

「じゃあまたな明日雨」

「またな」


---


 電車に乗り十五分ほどで家に着いた。 一日ぶりだが緊張する。 ゆっくりドアを開ける。

「今帰ったー」



 その瞬間何かすごい反動が来て俺はひっくり返ってしまう。

「うぉおお」



 それと同時に母さんの声が聞こえた。

「本当に心配した! 母さんどうなっちゃうかと思った」



 母さんがこんなにも俺のことを心配してくれてて俺は嬉しかった、 母さんが泣いているのを見て俺も泣きそうになった。

「心配させてごめん、 俺は無事だよ」



 それと同時に家のインターフォンがなる。

[ピンポーン]



 その場にいたのですぐにドアを開けると校長先生と重量先生がいた。 母さんは察した。

「では中にどうぞ」



 先生達は中に招かれる。 部屋には座布団が四人分引かれていた。 今日先生が来ること知っていたのだ。

「座ってください」



 母さんの合図で先生は座ると話を始める。

「昨日起きたことなのですが大変申し訳ございません」

 深く礼をする、 それを見た母さんは怒り出す。

「私は謝罪を求めているのではありません。 今後どのようにして生徒を守るかを知りたいのです、 風は能力無しなんですよ? 能力持ちでしたら多少戦闘が可能ですけど、 能力無しは戦闘に参加できませんよ? やられたらやられっぱなしなんですよ?」



 母さんが圧倒して話を進める。

「はい......今後はセキュリティーの強化や今まで行っていなかった戦闘練習など授業でやろうかと思っております」



 その答えにも母さんは納得しなかった。

「セキュリティー強化は当たり前です。 戦闘に関しては貴方たちが生徒を守ればいいのでは?」



 先生達も反論する。

「もし私たちがいないところで起きた場合自分の身は自分で守れないといけないという判断です」



 俺もそれには賛成だ、 母さんはそのことには何も返事しなかった。



「今のところはセキュリティー強化に一番力を入れていきたいと思っています」



 そう言って先生は立ち上がる、 他の生徒のところにも行かないと行けないから時間がないのだろう。


「では私たちは他にも行かなければ行けないところがあるので今回は置賜します」



 そういい再び深く礼をする、 そして母さんはとても小さい声で何かを言ったが小さすぎて何を言ったか聞き取れなかった。



「母さん?」

 俺は心配になり話しかけた。

「風はどう思う? この学校で安全に怪我なく過ごせると思う」



 俺はその確証はないが学校側が必死になっているのを分かっているから思ったまま母さんに言った。

「うん、 過ごせると思う」



 そういうと小声でいう。

「そっか......」



 そして立ち上がり母さんはその部屋から出た、 その時の後ろ姿を俺は見ることが出来なかった。

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