第34話 本部長と主任-8

「本部長、この部分は直さないとダメですかね?」

「そうだな。新しく交換しないとな」

 本部長は作業に当たった。

「今回の破損でデータに支障は?」

「ないな。交換した後、目立たないようにしないといけないがな」

「そうですね。それにしても、珍しいですね」

「何がだ?」

 田川主任は言葉を選んでいた。

「本部長はこの『ゼロ計画』に愛着があるんですか?」

 本部長はコーヒーを一口含んだ。間違えて買ってしまったブラックコーヒーだった。甘みのないコーヒーは好きではなかった。

「そうだな。それこそ、子どものためだからな」

 田川主任は言った。

「そうですね。本部長にとってはそうでしたね」

「こんな事態になるとは想定してなかったがな」

「これも計画の内ですよ。きっと」

「だと良いがな」

 本部長と田川主任はその後、黙って作業を進めた。

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