第14話 本部長と主任-3

「今日も残業ですか?」

 田川主任は本部長に訊ねた。

「ああ、少し変化が見られたらしい」

「じゃあ、今日は実験を…?」

 本部長は溜め息を吐いた。

「そうだな。そういうことになるな」

 田川主任は嬉しそうに答えた。

「念願じゃないですか。今日から忙しくなりますね」

「田川君は、嬉しいのか?」

 本部長は田川主任を一瞥して言った。

「はい。このプロジェクトも、ひいては世界のためになりますから」

 本部長は腰を叩きながらデスクから立ち上がった。

「本部長はなぜこのプロジェクトに?」

 本部長は少し考えて言った。

「子どものためだ。最も、今はそれすらも見失っているがな」

 田川主任は納得しかねない表情をしていた。

「俺は休憩を取るとするよ。田川君もコーヒーでも飲まないか?」

「はい、お供させて頂きます」

「田川君はブラックだったな」

「はい」

 本部長はもう一つ溜め息を吐いた。

「全く……。俺も歳を取ったな……」

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