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「こ今度開催する、演奏会の、協賛金のおお願いに来ました」

「演奏会?」

「が、学校の、中学校の吹奏楽部の演奏会なんですけれど、その、皆さまのご協力をお願いしたくて」

 たどたどしく答える彼女に、なんだかこっちまで胸が一杯になる。一軒一軒こうやって回って、協賛金をお願いしているんだと思うと彼女のことを応援したくなってくる訳で。

俺なんてそんなの一度もしたことないよ。それなのに一人で協賛金を集めているなんて。きっと怖くて緊張して大変だろうに。

 偉いなぁ。

「いいよ」

「え、いいんですか」

「もちろん」

 若い子を応援するのも、年配の役目でしょうよ。出来ることはしてあげないと。

「ありがとうございますっ!」

 不安でいっぱいだった表情が一瞬にして晴れやかに変わった。笑うとちょっと幼く見えてその純粋さに心が洗われるようだ。

 純粋って言うのはこういう事をいうんだなぁ、なんて。

「君は何の楽器をしているの?」

「え、私ですか?」

 しっかりと領収書を切って渡してくれた彼女に訊ねてみる。見ため的にクラリネットとかフルートとか、なんかそんな感じがする。背が低いから勝手にそう思うかもしれないけど。

「あ、コントラバスです」

「え、コントラバス!?」

 あの凄く大きなバイオリンみたいなやつをこの子が!? 身長は一五〇センチあるかないかくらいだろ!? バランスとれなくね!?

「これくらいあるんですけど」

 そう言って表したのは身長を優に超える大きさで。いやぁまじか、人は見かけによらないな・・・

「えへへ。コントラバスを弾いているって言うとみんな驚くんですけれど、家族がみんな楽器をやっているんで。末っ子なので残りもののコントラバスを」

「大変じゃない?」

「もう慣れました。それに身体をいっぱいに使って弾くのも楽しいんで」

 最後まで礼儀正しく頭をしっかりと下げて去って行った彼女から、一口三千円の協賛金の換わりにポスターと演奏会のチケットを一枚貰った。開催日は日曜の昼間、仕事前に少し寄れそうな時間帯だ。

「へぇ、面白そう」

 当日演奏される曲名がいくつも並ぶ。有名な曲も最近の曲も並んでいる。

当日は少しだけでも演奏会を聴きに行こう。アンバランスな彼女の楽しそうなコントラバスを聴きに。

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