揺れるリボンタイ

カゲトモ

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 コンコン。

 開店のほんの少し前。もうちょっと時計の針が動いて真上を向いたら、看板に灯りを付けに行こうと思っていたのに。突然に扉をノックする音が聞こえた。

「お客様、ですかね?」

 顔を見合わせた斉藤君が訊く。いや、俺も分からないけど、可能性としてはあり。あと十分もしないうちに開店なんだけどな。世の中せっかちさんも多いから。けど、開店前に催促でノックされるのは初めてだよ。

「どうします?」

「んーそうだね」

 このまま居留守使うのもなぁ。開店の時間を知っているなら、絶対に中にいるって分かっているだろうし。かといって今まで一度も開店時間より早く開けたこともないし・・・でも怖いオッサンとかだったら面倒だなぁ・・・

「とりあえず出てみるよ、もしかしたら商店街の誰かかもしれないし」

 何か伝達事項があって来ているのかもしれないし、もし違ったとしてもお客様なら時間まで待ってって言えばいいし。ヤバい人ならお帰り頂けばいいし。

「はーい」

 もう一度斉藤君と視線を合わせてから静かに扉を開けた。別に堂々と開ければいいんだけど、なんとなくそっと開く。

 太陽の名残を残す空に、一つの人影。

「お忙しいところすみません」

 扉の先の人物は俺の存在を確認すると急いで頭を下げてそう言った。

 そこにいたのは黒髪の、セーラー服を着た女の子だった。ベタに髪形は二つ縛りだ。

「こんにちは、あ、あの私」

 頭を下げたまま自己紹介をする少女は、近所の中学校の生徒だった。良く見ればスクールバックも下げている。おずおずと上げた顔は、中学生らしい可愛らしい女の子だった。

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