第9話鍵盤の歪む夜
8月11日。9回目の訪店と相成った。
この日も酔い過ぎていてピアノの呂律が回らなかった。最近鍵盤が歪んでいる。鍵盤はクラゲのようにたゆたう。サトルの指はその波に乗れない。鍵盤の歪む夜ー。
「またカラオケ行きたいな。」
「私もそろそろ行きたいと思っていたの。でもサトルが連続出勤って言っていたから無理かなって。」
「全然そんな事ないよ。仕事自体は慣れているし。」
梨奈が心配してくれたように、サトルは連勤中であったし、つまり、明日も仕事であった。
「サトルが大丈夫なら良いよ。」
「ホント?うれしい。」
こうして梨奈と4度目のカラオケに行くこととなった。
梨奈のカラオケカードを預かって先に待っている。ソファーで横になってなって「歌うチャンネル」というカラオケのCMの音を繰り返し聞いて寝られない。この待ち時間はやはり長かった。
2時半くらいになって梨奈が登場した。
今日の服装は今までで一番セクシーな黒のワンピースであった。
セクシーだね、と言おうと思って出た言葉は、
「夏みたいだね。」
だった。
「だって夏だもん。」
梨奈の歌う浜崎あゆみの「ゲーム」という楽曲が印象に残った。その歌詞がサトルの脳裏に反芻していった。
翌日ー。
サトルははじめて徹夜明けで仕事場に立っていた。なぜ、ここまでして遊んでいるのか分からなかった。眠気でフワフワして、自分が誰かに操られているマリオネットみたい。ユラリユラリ駆け抜けていくのであった。
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