第15話
ーーなるほど、つまり岩井先生の股間に付いている葉っぱみたいなのが
マタオは心の中で封印の神具から聞いた説明を確認した。
そうです、あれはこの世界の恥をコントロールする神具ですので、早急に封印しなければ大変なことになります。
マタオたちはクラスメイトと一緒に岩井トラオと恥の神具に先導され、体育館に連れてこられていた。そこにはすでにクラスごとに並んで座っている大勢の裸の生徒と、先生たちが待機している。
……しかし無茶苦茶な展開だな、頭がおかしくなりそうだよ。視線にも困るし。
マタオは心の中でそう言うと、できるだけ女性陣の裸を見ないように努力しながら、
で? あれをどうやって封印するんだい?
恥の神具を所有している岩井トラオに、私を直接触れさせればいいのです。
封印の神具はマタオの心の中で答えた。
へぇーシンプルだな、だから僕の右手と合体したわけか。それなら簡単じゃないか、
ええ、そうしたいのはやまやまですが、現状マタオ様の恥が奪われないように、私が封印の能力を使ってお守りしている状態ですので、これ以上岩井トラオに近づくと私たちの気配が恥の神具に感知され、マタオ様が裸の戦士のフリをして潜んでいるのがバレます。
あーなるほど、僕が恥の神具を見ても正気を保っていられるのは君のおかげだったんだね。気配? そんなものでバレるのか?
ええ、マタオ様には理解しがたいでしょうが、私たち神具は『セクス』という存在エネルギーを所有者から得ることで能力を発揮しています。ですので、他の所有者の近くで
ふーん、
マタオは封印の神具の説明を聞くと、自分なりに推測しながら心の中で言った。
はい、その通りです。幸いにも恥の神具は能力の性質上、
なるほど、大体理解できたよ。それなら封印の力を解除するっていうのはどうだい? 君の能力を使わなきゃ恥の神具に近づいても僕らの
それはそうですが、私の能力を解除すれば恥の神具にマタオ様の恥が奪われ、一瞬で裸の戦士にされてしまいます。
ああ、だから僕は目を閉じて恥の神具を見ないようにするよ。そのうえで君に岩井先生の居るところまで誘導してもらえれば、あとは右手で触れた瞬間に封印の能力を発動すればいい。それなら問題はないだろう?
マタオは頭をフル回転させながら作戦を提案した。
いえ、それは現実的ではありません。恥の神具の能力の有効範囲内では強制的に目が閉じられなくなり、視線も誘導されるようになっています。それにそんな状態で岩井トラオに近づけば、警戒されて裸の戦士たちに取り押さえられるでしょう。
……マジか、うーん、厄介な能力だな。それなら一か八かこっちの
そんなギャンブルはできません。こちらの
僕の命が? ははっ、そんな大袈裟な。
マタオは鼻で笑いながら心の中で答えた。
いえ、全然大袈裟ではありません。恥の神具からしてみれば、私に封印されたら宝物庫の中に転送され、また閉じ込められてしまいますし、そうなれば所有者の岩井トラオとしても恥の神具が使えなくなり、神具関係の記憶も抹消されてしまいますから、彼らの目的は達成されません。
……だからってそこまでする? 僕を殺したら警察沙汰になるだろうし、色々面倒じゃないか?
マタオは心の中で不安になりながら言った。
警察など、恥を奪われて裸の戦士にされるだけです。それに所有者が死んだ場合は、この世界に最初から存在しなかったことになりますので、何の問題もありません。
えっ!? 死ぬと存在が消えるだって!? なんでそんなことになるんだ!?
彼は衝撃的な事実を封印の神具から告げられて驚愕した。
先ほども説明した通り、私たち神具は『セクス』という存在エネルギーを所有者から得ることで能力を発揮しています。所有者が死んだ場合はどんな形であれ、
……言っている意味がよく分からないんだが、存在が消えるっていうのは、所有者が死んだら誰にも覚えられていないって解釈でいいのか?
マタオは頭が混乱しそうだったので、とりあえず理解できそうな部分を尋ねた。
ええ、神具の関係者を除けば誰も覚えていません。ですからマタオ様が私を所有していることが他の所有者にバレてしまいますと、命を狙われる危険性があります。マタオ様が死ねば私も地上から存在が消えてしまいますので。
なるほど、僕さえ殺してしまえば神具を封印される心配がなくなるから、他の所有者からしたら都合がいいのか。
その通りです。他の所有者からしたら触れられるだけで神具を封印され、それに関する記憶も全て消去されるのですから、マタオ様は脅威でしかありません。当然、私たちから逃げたり隠れたりする所有者も出てくるでしょう、ですからどちらにせよ神具を全て回収するという目的のためには、マタオ様が私を所有しているという事実はできるだけ隠しておきたいのです。
封印の神具は落ち着いた口調で論理的に説明した。
ああ確かに、それはそうだね。うん? というかちょっと待って、そういえば僕はいつから君の所有者になったんだい? 許可とかした覚えがないんだけど。
マタオは違和感に気付いて、封印の神具に尋ねた。
神具は使用した時点から所有者になります。マタオ様の場合は先ほど教室で恥の神具を見た時に、私が封印の力でお守りしましたので、それが使用となり私の所有者になっております。緊急事態だったとはいえ、十分な説明ができずに申し訳ございません。
封印の神具はマタオの心の中で誠心誠意謝罪した。
マジかぁ……それはなかなかの事後承諾だね。いや、いいんだ、どちらにせよ僕も妹と両親を取り戻すためには神具を全て回収しないといけないし、そのためには君の力が必要だからね。
マタオは封印の神具の説明に多少戸惑いながらも、自分の目的のために覚悟を決めた。
そう言って頂けると助かります。私たち神具は必要としてくれる者に引きつけられますので。ミスマッチはありません。
確かに、この世界で僕ほど君を必要としている人間は存在しないだろうからね。
マタオは皮肉っぽく心の中で言った。
とにかく大体の状況は分かった。要するに岩井先生に右手で触れて封印できれば、みんなも元に戻って万事解決ってわけだな?
はい、封印できれば奪われた恥が皆様に返却されますので、元に戻ります。
ふう、それなら一安心だ……しかしキラユイと白州さんは大丈夫かなあ? ここには居ないみたいだけど。
マタオは体育館の端から、二番目の列に座って並んでいるキラユイのクラスメイトたちを確認しながら、封印の神具に尋ねた。
さあ、どうですかね。所有者と違って普通の人間の
なるほど、それならここから出て合流したいなあ。見たところほとんどの生徒と先生たちは、恥を奪われて裸の戦士になっているみたいだし、どう考えても僕らの力だけで岩井先生に触れるのは難しいからね。
マタオは冷静に状況を確認しつつ、心の中で封印の神具に言った。
そうですね、恥の神具と所有者の岩井トラオとしては、すでに裸の戦士を使って少数の取り逃した学校関係者を捕まえている段階ですから、トーリエ学園が完全に制圧されるのも時間の問題でしょう。
ここが終わったら外にも影響が出るだろうしな。しかしどうやって怪しまれずに体育館から出たものか。来る時もそうだったけど、出入り口は裸の戦士たちが見張っているんだよなぁー。定番だけどトイレに行くフリでもしてみるか?
ええ、そうですね。それが一番自然かもしれません。
マタオは封印の神具の了解を得ると、立ち上がってなるべく目立たないように体育館の裏口まで歩いた。だが当然、そこにも裸の戦士が立っている。
「ちょっとあなた、どこに行くつもりですか?」
両手を頭の後ろに組んでスクワットをしていた裸の戦士は、全身に汗をびっしょりかきながらマタオを呼び止めた。
うわっ、全裸でこれはやばいな。というかこの人、キラユイのクラスの担任だったような気が……確か
マタオは女性の裸を見るのに抵抗があったが、恥ずかしがってしまうと怪しまれるので、裸の戦士となった
「ちょっと! 聞いているのですか? 今はトラオ様の命令で、パトロールと入り口の警備に出ている者以外は全員ここで待機ですよ」
「ええ、それは分かっているんですが、ちょっとお腹の調子が悪くて、できればお
マタオは腹を押さえてモジモジしながら言った。
「はあ? お
裸の戦士となった倉吉は、普段とは違う下品な言葉を使いながら、ようやくスクワットを中断した。それと同時に彼女からバフっという低音のオナラも聞こえてきたが、恥じらう様子は全くない。
「いやあ、さすがにここでしちゃうとほら、色々と問題がありますから、便所に行ってきますよ、便所に」
マタオは苦笑いをしながら言って、彼女の横を通り過ぎようとした。しかし次の瞬間、左腕を掴まれる。
「ここでクソをケツ穴からひり出す行為に、何の問題があるのですか? まさかあなた、恥を感じているんじゃないでしょうね?」
彼女の鋭い視線がマタオに向けられる。
「い、いえ、何を言っているんですか
マタオは額から汗を滲ませながら答えた。
「それはそうでしょうけど、一応テストをした方がよさそうですね」
「テスト?」
先生は掴んでいたマタオの左手を自分の胸に押し当てた。
「ぶっ!」
「あれ? どうしました? 顔が赤くなっていますが?」
「ち、違います! これはクソを我慢しているからです!」
「ふーん、おばさんの胸じゃあダメかしらね」
「いえ、全然そんなことはないです! まだまだハリもありますし」
「えっ?」
「いえ、なんでもないです! もう行ってもいいですか?」
マタオはそう言いながら、倉吉の胸から急いで手を離した。
「そうですね、では最後にケツの
「は?」
「は? じゃないでしょ、退室時のケツの
「な、なんですかそれ?」
「忘れてしまったのですか? 私たちの信頼の証を。それで恥が無いことを証明しなければ、当然ここからは出られませんよ」
「……」
なんで僕が妹の担任にケツの穴を見せなきゃいけないんだよ! 死ぬほど恥ずかしいんだけどっ! 助けてくれ封印の神具! 君の力があればなんとかできるんだろう?
マタオは心の中で必死に懇願した。
えーと……すいません、無理です、言う通りにして下さい。
封印の神具は心の中で気まずそうに答えた。
嘘だろっ!? まだ誰にも見せたことないんだぞっ!!
……お察ししますが、彼女はすでに恥が奪われている状態ですので、今の私の力では正気には戻せません。心苦しいですが我慢して下さい。
……分かった。じゃあ一つだけ約束してくれ。
マタオは最悪の気分になりながら、心の中で封印の神具に言った。
はい、何でしょう?
このことは絶対に誰にも言わないでね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます