第11話 VS恥の神具編
キラユイとカオルが教室を出てトイレに向かっている頃、隣の一年一組の教室では、ちょうど担任の
「はい、本日も全員出席ですね。では皆さん、今すぐ服を脱いで下さい」
トラオは出席簿を閉じた後、さも当たり前かのようにそう呼びかけた。しかし当然それを聞いた生徒たちは全員唖然とする。
「おっと、これは失礼しました。まずは私から脱ぐのが礼儀でしたね、ではお先に……」
「ちょっ、ちょっと待ってください先生っ!」
教卓の目の前の席に座っていた委員長の女子生徒は、ベルトに手をかけたトラオを阻止しようとして言った。
「服を脱ぐってどういうことですか? 何か授業に関係があるのですか?」
「いえ、ありません」
トラオは委員長の問いにキッパリと即答した。
「あ、ありませんって、では私たちが服を脱ぐ必要はないですよね?」
委員長は困惑しながら再度トラオに尋ねた。
「あります」
「……なぜですか?」
「裸の方が誠実だからです」
トラオはベルトを緩めるのを中断して、委員長に力強い眼差しを向けながら言った。
「私は子供の頃から両親に恥をかかすなと言われ続けて育ちました。その結果、必死に努力をしてトーリエ学園に入学し、今はこの学園の先生としてあなたたちに勉強を教えています。年収も高く、美人な妻が居て、娘も産まれました。しかし私の心が満たされることはありません。なぜだか分かりますか?」
「……いえ、分かりませんが」
委員長はトラオの突拍子のない話に困惑して言った。
「それは私が
「はあ、それと私たちが裸になるのと何か関係があるのですか?」
「ええ、服というのは恥の象徴のようなものです。従ってまずはこれを排除することによって、人間を恥の支配から解放するのです」
トラオはかけているメガネを人差し指でクイっと押し上げながら言った。自信満々である。
「ああ、ただ勘違いしないで頂きたい、私は自分の裸を他人に見せて快感を得るような人間ではありませんし、男女問わず君たちの裸に性的な興味を抱いているわけでもありません。ただ皆さんにキラキラした生活を送ってほしいだけなんです」
委員長はトラオの解釈を聞いて眉をひそめた。
「意味がわかりませんっ! そもそも
「ええ、確かに法律に抵触しますね。もちろんそれを否定するつもりはないですし、自分勝手な解釈をしてこの社会のルールをねじ曲げようとも思いません。それに服を着るメリットについても、私は熟知しています」
トラオが意外にも冷静に現状を把握しているようだったので、委員長は少し安心した。
「そうですよね、では私たちが服を脱ぐ必要はありませんね?」
「いえ、裸になって下さい、今すぐ」
トラオは清々しい表情で言った。なぜかは分からないが、委員長は圧倒されそうになった。しかしクラス全員のために負けるわけにはいかない。
「自分が何を言っているのか理解していますか? 学校の先生が生徒に罪を犯せと言うのですか?」
「フフッ」
トラオは必死に問いかけてくる委員長を見て、思わず微笑した。
「ワタシ何かおかしいこと言いました?」
「いえ、失礼しました。では委員長、質問に質問を重ねて心苦しいのですが、そもそも我々はなぜ服を着ているのか、分かりますか?」
「はい? ですから先ほどから指摘しているように、法律の問題があるからだと思いますが」
委員長は少しムッとしながら答えた。
「では法的に問題がなければ委員長は
「いえ、なりません」
「それはなぜですか?」
「……恥ずかしいからです」
「そうですよね、当然それも服を着る理由の一つです。では他にはどのようなことが考えられるでしょうか?」
トラオは授業でもしているかのような口調で言った。
「……あとは、身体を守ってくれたり体温を調節する役割もありますし、制服みたいに所属を分かりやすくする意味合いもあれば、単純にオシャレをするのも服を着る理由だと思いますが」
「はい、さすが委員長、よくできました、全て正解です。しかし服を着る最も重要な理由が一つ抜けていますね」
トラオはかけていたメガネをサッと外しながら、委員長に顔を近づけて
「それは大多数の人間が服を着ているからです」
岩井トラオがそう言うと、彼の着ていた服は下着も含めて一瞬にして消え失せ、股間にイチジクの葉っぱが一枚付いているだけの状態になった。もちろん委員長と生徒たちは驚いたが、なぜかトラオの異様な姿を見ていると、洗脳されたように全員が黙って制服を脱ぎ始める。
「フフッ、つまりこの世界の皆さんが一人残らず裸になれば法律は改正され、恥の問題も解決し、身体も環境に適応するのです」
トラオは裸になった生徒たちに声をかけると、そのまま教室のドアを勢いよく開けた。
「では参りましょう! 私の股間に付いている
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