スカイプレポート その2

エフヌロ「……でありまして、本日のお天気は……」

メル「んー?エフヌロさん、なんか雑音入ってますよ?」

エフヌロ「??……ああ、失礼」


エフヌロさんはテレビでもつけてやっているのか。全く別の女性の音声が入ってきていた。

しかもその女性の音声が、やたらノイズが大きい。


ヴァレー「まるでホラーの一場面やなw スカイプで突然ノイズで女性の声が入るとかw」

メル「あははは」


こんな感じで会話は進んでいく。



ゴロゴロ……



窓の外では雨が降り始め、雷が鳴っている。


メル「さっきのゴゴゴって音なんなん?」

ヴァレー「雷やで。めっちゃ雨降ってるし」

メル「マジで?かなり音聞こえてんだけどw」


スカイプで話しているものの、この3人はそれぞれかなり離れたところに住んでいて、そこから会話している。

ここでは雨が降っていても、向こうでは晴れているのだろうか。


ヴァレー「雨が降ってきてちょっと涼しくなってきたかな」

メル「こっちはまだ暑いわー」


俺は先ほど話題になっていたファイナルファンタジー7の画像検索画面を見ていた。


ヴァレー「バレットかっこええやん……このグラサンがたまらんな」



ピロン



スマホの着信が鳴った。メルからショートメールが入っている。



メル:すまんなヴァレーさん、回線遅くて音声途切れてるやろ?



おいおい、今スカイプでしゃべってんのになんでわざわざショートメール入れるんだよw

スカイプでしゃべりながらスマホ打ったのか?


ヴァレー「器用やな、俺にはできんわw」

メル「んー?」

ヴァレー「ははは」


しかし言われてみれば、確かにメルの音声の途切れがひどいな。

キーキー雑音が入ってるし……さっきから雑音がひどくなってきている。


ヴァレー「なんか雑音がひどいことになってきたわ」

メル「マジかー?設定変えてみるかな?」


だが雑音は一向に収まる気配がない。さらにひどくなっている。

その雑音の中に、何やら女性の声らしきものが聞こえているのだが……


ヴァレー「エフヌロさん、まだテレビつけてます?」

エフヌロ「……いいえ?切ってますよー」

ヴァレー「んじゃメルのほうかな?」

メル「えー?俺テレビとかつけてへんよ?」


??「でありまして……次の放送は……」


ヴァレー「女の人の音声聞こえるでw」

メル「なんでや……」

ヴァレー「呪いかw」

メル「ちゃうってw」


??「あー……んあー……」

ヴァレー「……ん?」

??「ギャアア!!……あー……」

ヴァレー「……」


??「返してよ!……あたしの……返しなさいよ!」


ヴァレー「なんや?テレビの音声入っとるで?」

メル「だから、テレビつけてへんってw」

エフヌロ「つけてないですよー?」

ヴァレー「んん?じゃこれなんの音やろ?」



ピロリ



またメルからショートメールだ。



メル:すまんすまん、さっきまでネットで動画のニュース見ててな



なんだそうだったのか。


ヴァレー「メル、器用やな、ショートメール打ちながらスカイプでしゃべるとかさw」

メル「え?ショートメールってなに?」

ヴァレー「俺んとこに打ってるやん」

メル「??」

ヴァレー「さっきから俺のスマホに2回も入れとるがな」



ブツッ!!



ヴァレー「うおっ!?」


突然部屋が真っ暗になった。



ゴロゴロ……



停電かよ……

パソコンの電源が落ちてスカイプも落ちてしまった。

完全に真っ暗じゃねーか……なにもできん。


しかし10秒もたたないうちに停電は復旧した。


すぐにパソコンを再起動し、スカイプを立ち上げる。


ヴァレー「すまんすまん、停電なってたw」

メル「まじかー」

ヴァレー「またパソコンに負担がかかったかな」

メル「やなー」


そんな感じでまたいつもの会話に戻る。


ショートメールのことは……まあどうでもいいか。

そして俺は自分のスマホを見た。


ヴァレー「……ん?」


スマホの電源が切れている。


ヴァレー「……」


さっきの停電で電源が切れた?


おかしい。スマホはバッテリーだから、停電しても電源が落ちるわけがない。

停電時にもスマホの画面は消えないはず。

さっきの停電の時、確かにスマホの画面も消えていた。


思わず興奮してスマホの電源ボタンを押してしまったのか?


電源ボタンを押してみても画面がつかない。

電源ボタンを長押しすると、スマホが起動し始めた。


スマホの電源が完全に切れていた。スリープ状態ではなく、だ。

このスマホの電源を切るには、2秒ほど電源ボタンを長押しして「電源を切る」をタップしないと切れないようになっている。


俺は停電の時に焦ってそんな操作をやらかしていたのか?

いやそんなはずはない。停電は一瞬。それに停電した瞬間、確かにすべてが真っ暗だった。スマホの画面も一瞬で消えていた。


ヴァレー「なんでだ……」


俺はパソコンの画面を見た。

スカイプが起動していて、相変わらずメルとエフヌロさんの楽しい会話が続いている。


スマホはすでに起動し、いつもの画面が出ている。


そしてスマホのショートメールを見てみると……


メルがさっき入れたショートメールがない。


ヴァレー「あれ?」


どこを探してもさっき受け取った2通のショートメールが見当たらない。


自分で消したのか?


今は午後10時10分。スカイプの会話はまだ続いている。

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