私
@chihirodes
1話
私は、昔から目立ちたがり屋だった。保育園の時みんなに見てもらいたくてよく泣いた。小学校の時人と違うことがしたくてサッカーを始めた。そうすればみんな「すごーい」って私の周りによってきてくれたから、途中で辞めることも出来なかった。運動会でみんなが嫌がる競技つまり長距離走に出た。結果は散々だった。応援団長もした。昔から声だけでかかった。努力はしなかった。その場で誰かに見てもらえれば良かったから。そしていつの間にか中学校に通っていた。
入学式。私は熱を出して休んでしまった。ほかの学校の人ならグループができてとか色々大変たのだろうが、私の学校は小中一貫教育のためなんの心配もなかった。
次の日。学校へ行くとどこか見たことのあるような人がいた。その人は皆から「こうちゃん」と呼ばれていた。そのあだ名は1人しか聞いたことがない。よくよく見ると、毎日顔を合わせていた「谷村恒星」という髪が長くて地味な男子だった。そいつが髪を切ってすごく男の子っぽくなっていた。私の学校のみんなは小さい時からずっと一緒って子が多いから恋愛感情を抱いたことはなかった。でもそいつはいつもと違うくてイケメンとかそういう意味ではなく、キラキラしていて「かっこいい」と思ってしまった。
「おはよう。髪切ったんやね。ええと思うで」
話しかけてみた。普通に言ったつもりだけど内心すごく緊張していた。この年にもなって(12歳)人見知りとかなんか恥ずかしいから人にはあまり言っていないが、心臓がもうやばいくらいバクバク言っていた。
「えっ、今さら?あっそっか昨日おらんかったしな笑笑」
私のイメージしていた「こうちゃん」ではなかった。私の中のこうちゃんは地味で暗くておはよって話しかけても「あーおはよう」としか言わない人だったのに髪を切るだけてこんなにも人は変わってしまうんだなんて思った。こうちゃんが髪を切ったせいでみんなの話題はテストとこうちゃんで持ち切りだったなんか悔しかった。そこで考えた。「テストの点数を1番下くらいにしたら皆私のことを見てくれるんじゃないか」と。1時間目から始まったテストでは2問しか答えなかった。2時間目3時間目4時間目どの時間も全て2問だけ書いた。それ以外は空白にして出した。これできっと私を見てくれるそう思っていた。
次の週、月曜日。テストが全教科帰ってきてみんなの前に順位が張り出された。私は何故か下から10番目の90位だった。あまり目立てなかった。1位を見てみるとこうちゃんだったみんなはこうちゃんを囲ってすごいすごいってびっくりするくらい褒めた。その時誰の目にも私は写っていなかった。それがなんたが悔しかった。そしてその時気がついた、「下より上の方がみんな見てくれる」と。なのでその次のテストもその次の次のテストも頑張った。(授業中寝なかった)すると一学期の期末では1位をとった。合計点数900点。私の学校では創立70年のうち全教科満点をとったのは5人目だったらしく皆からすごく褒められた。そしてこうちゃんに向かって私のできる精一杯のドヤ顔をした。でもこうちゃんの目に私は写っていなかった。なんだか私だけ張り合って馬鹿みたいだった。
私 @chihirodes
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。私の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます