RGBの日常

鈴井ロキ

その1 季節外れの真っ赤な太陽

2018年5月中旬。立川市にあるとある高校。


昼休みになり、1ーAの教室はひと時の自由を得た生徒たちの話し声であっという間に満たされた。


窓側最後列の一つ前の席。


そこが俺の席であり、さっきまで受けていた授業の後片付けをしてから、真後ろにいる赤毛のバカに声をかける。




「おーい。生きてるかー?」


「へんじがない……ただのしかばねのようだ……」


「いや返事してるだろ」




声はするが、机に突っ伏したままピクリともしない赤毛のバカこと、赤瀬辰真。


普段はウザいくらいに暑苦しかったり煩かったりするヤツだが、今日みたいに暑くなると途端に静かになる。


それぐらい暑さに弱いヤツだが、こいつほどじゃないにしろ俺も季節外れの気温に割と参ってる。


顔には出ないタイプらしく、30度を超える真夏日でも平気そうに見えるらしいが。




「やっほー……て、アカっちはやっぱり瀕死になってるね」




少し高めの声で話しかけてきた緑髪。こいつは間違いなく、俺以上に顔に出ないタイプだと思う。


名前は緑川悠矢。こいつとは中学1年の頃からの付き合いだが、どんなに暑かろうが寒かろうが、雪が降ろうが雷がなろうが、こいつのテンションが上下したところを見たことがない。


どんな時でも常に一定なんだ。




「だれでもいい……だれかたいようこわしてきて……」


「コンビニで何か買ってきてみたいなノリで言うな」


「壊したら今度は死ぬほど寒くなるよ?文字通りの意味で」


「やっぱいい……寝る……」


「今お昼だよー。ご飯どうするのー」


「美少女に口に含んでもらってからマウストゥマウスで……」




死にかけで口数こそ少ないが、変態なのは変わらない様子。




「白咲さんにお願いしてみる?」


「あの白咲でも全力でドン引くからやめろ」




チラリと視線を教室の真ん中に向けると、なにやら盛り上がってる集団がいて、その中に色白黒髪、お嬢様結びの女子がいる。


彼女が今、話題に出た白咲美里だ。


いわゆるクラスのマドンナ的な立ち位置にいる女子で、男子女子問わず常に誰かが近くにいる。


誰に対しても態度を変えず、優しく穏やかに接する白咲もまた緑川と同じく変動がとても少ないタイプだが、そんな白咲でも赤瀬の欲望をぶつけたら3歩ほど後ろへ引くだろう。




「とりあえず、バカはほっといて食堂行くか」


「うーん……あまり構ってると食べる時間なくなるし、仕方ないか」




席を立ち、今なお突っ伏してる変態を一瞥しつつ問いかける。




「おい、ついでに購買で余り物買ってくるけど何が良い?」


「きれいなおねえさんのおっp「OK、クロワッサンと牛乳買ってくるからそのまま死んでろつかマジで死ね」」




辛うじて喋る屍を放置し、足早へ食堂へ。


教室を出たところで、緑川がニヤニヤとこっちを見ていることに気づいた。




「なんだよ」


「いやさ、なんだかんだで優しいなと思ってね」


「うるさい黙れ殺すぞ」


「おおこわいこわい」




肩をすくめる緑バカは無視して、

食堂のメニューを思い出しながら足を動かす。


……今日はなんか冷たいの食うか。

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RGBの日常 鈴井ロキ @loki1985

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