第45話
「どう、して・・・?」
「間一髪ってところか。とりあえず、無事そうだな」
ジャンヌが何とか言葉にした疑問を無視して、勇士は彼女が無事な事を確認し、ほっと胸を撫で下ろした。
「流石に少し熱いな。この魔法の威力は中々だな」
『うーむ、儂には眩しい風程度じゃのう』
「・・・・・」
ジャンヌにとっては致命的な温度をしている炎を浴びているにも関わらず、呑気に温度の評価している勇士たちを見て、彼女は呆気に取られていた。刀が喋った事にも気付いていない程だ。
「?おーい!大丈夫か?」
「・・・・・はっ!どうして助けに来たんですか!?」
呆然としているジャンヌに勇士は彼女の顔の前で手を振って意識の確認する。目の前で手を振られた事でジャンヌは現実に引き戻された。すぐさま勇士を問い詰めるが、勇士はそれに答えず、苦笑して何やら下を指差して口を開く。
「それよりも重要な事があると思うぞ。例えば、この建物の強度とかさ」
「強度?」
ジャンヌは勇士の指摘に首を傾げるが、その言葉に答えるように勇士たちがいる建物が徐々に傾き始めた。勇士たちがいるのは見晴らしが良いという理由で、ジャンヌが移動した20階程の高さがあるマンションの屋上なのだが、このマンションはどうやら最近建てたものらしく、最新強度や耐火性を上げる魔術が施されていた。そのため、多少魔物の魔法に耐えていたが、当然長くもつ筈もなく、倒壊し始めていた。
「じゃあ、ちょっと失礼して・・・」
「え?ちょ、ちょっと待ってください!何を・・・?」
「まあ、直ぐに分かる」
勇士はジャンヌを両腕で抱き抱える、俗にいうお姫様だっこだ。ジャンヌは急に抱き上げられて混乱していたが、勇士はお構い無しに次の行動に移る。膝を曲げ足に力をいれて、倒壊しているマンションの屋上から地面に向かって跳躍した。
「きゃぁぁああああああああぁぁぁ!!」
音速を遥かに超える速度で地面が迫ってくる光景にジャンヌは目を思いっきり閉じ、おそらく前世を含めても一番大きな悲鳴を上げた。
「よっと!」
その速度ではあり得ないほど軽やかに地面に着地した。地面には僅かにヒビが入っただけだった。
「おい、もう地面に着いたぞ」
「は、はい」
地面に着地した後も目を閉じているジャンヌに勇士が声をかける。そこでやっと風圧を感じない事に気付いたようで、恐る恐る目を開いた。
「さて、手っ取り早く片付けるか・・・」
「勇士さん、片付けるって何を・・・?」
「ん?そんなの決まってるだろ、あのデカブツだよ」
ジャンヌが目を開いた後にゆっくりと彼女を地面に下ろした勇士は、SSランクを倒す事をあっけらかんと口にした。
「な、何を馬鹿な事を言っているんですかっ!?相手はSランク以上の力を持っているんですよ!?」
「お前は俺の事を知ってたんだから、当然実力もしってるだろ?」
「それは、そうですが・・・・」
魔物と戦おうとする勇士をジャンヌが止めようとするが、勇士の言葉で彼の実力をミカエルから聞いていた事を思い出し、反論すら出来なかった。説得しようとして論破された形になってしまった。
「異論はなくなったか?」
「はい、ですが、それなら私も一緒に戦います!」
それが勇士を止める事が出来ないと理解したジャンヌの最大限の譲歩だった。
「じゃあ、回復魔法の準備だけしといてくれ、元ではあるが『神域の英雄』の力ってやつを見せてやるよ」
そう言って笑うと勇士は悠然と歩きだした。強者のみに許された傲慢な発言、しかし、勇士の表情には油断など一切なかった。代わりにそこにあったのは揺るぎない自信と勝利への確信だった。彼からすれば、SSランクなど有象無象の存在なのだから。
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