第3話
「ねぇ隼人、お願いがあるの。」
「なんでしょうか、お嬢様?」
じっ、と真剣そうな顔でこちらを見てくるお嬢様。
「今すぐ車を出してちょうだい?」
「なりません。」
清潔そうな真っ白い部屋。ツンとするミントのような匂い…そう、ここは歯医者である。私のお嬢様、北条 麗奈は歯医者が大嫌いだ(私の知る限り、大体の方が嫌いだと思いますが)。
「嫌だ!隼人、車を出して!主の命令が聞けないの!?」
「私雇い主はお嬢様のお父様なので、お嬢様を歯医者が終わるまで出すなとの命令を受けたまでですね。」
淡々と述べるわたくしが気に食わなかったのか、頬を膨らませて顔をそむける。
頑固なお嬢様に無理やり、だなんてことは通じないと思いますが…実は、こういうときの為に一応策は練ってありますけどね。
「お嬢様、お父様には秘密ですが…歯医者で逃げれる方法がございますよ?」
お、食いついてきた…
「ぁぁぁぁ、歯が痛い、痛い痛い…と痛がれば帰らしてもらえるそうですよ?」
「それは本当!?よし、それなら怖くないわ」
ふふ、と余裕の笑みを浮かべて自信満々に立ち上がる。
「すぐに戻ってくるわ。車の準備を頼んだわよ」
騙されたことに気付かず、お嬢様はツカツカと歩いていく。皆様、くれぐれもお嬢様にちくらないでくださいね?
さて、仕事は終わりました。
ー十分後ー
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
とお嬢様の奇声が聞こえたことはいうまでもないでしょう…
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