第6話 Valentine's blue
1
それは、予告もなく。
そして、前触れもなく。
静かに訪れようとしていた。
――お兄ちゃんて、とても綺麗ね。
――みんながお兄ちゃんのこと、大好きなのね。
たくさんのリボン。たくさんの――気持ち。
両手いっぱいのチョコレート。
そんなことを言ったのが、一体何時のことだったのか、もう憶い出せない――二月。
☆
「ただいま」
皇 司が居間で参考書を広げていると、兄が学校から帰ってきた。
司は、高校受験を明後日に控えた中学三年生で、学校での授業はもうない。
だから朝から、こうして一人静かに居間でもって勉学に励んでいたのである。
気がつけば、窓から見える表の景色は薄闇に沈んですっかり暗くなっていた。
柚真人は、大きな紙袋を抱えている。
「お帰り。……遅かったね柚真兄、……ってあたりまえか。今日はまた一段と足留め食ったみたいね?」
毎度のコトながら非常に疲れた様子――と司は思い、兄を見上げた。聞かなくとも、その紙袋の中身がわかってしまう。今日は二月十四日、製菓会社の陰謀に日本全国の愚かな消費者どもが踊らされている日なのだ。
――ま、バレンタインデイ、とかも云うんだけど。
行事は毎年のことなのだけれど――司は参考書を閉じて、今年も柚真人を労うことにした。この一寸やそっとでは他人様とは比較にもならない美貌の兄には、こうしたイベントごとにそれなりの苦労があることを、司は良く良く知っていたからだ。
柚真人がため息とともに畳の上に座り込む。
彼が投げ出した袋の中を覗いて、司は呆れたように感嘆の声を上げた。
「相変わらずのモテっぷりだこと……これ新記録じゃない?」
「……重かった」
柚真人はしみじみと呟くと、肩を落とした。
「だよね。毎年毎年本当にすごいよ、ご苦労サマ。どうするの、これ?」
「まあ……。毎年のことだからな……。おいおい始末するよ。台所の戸棚においておくから、司も手伝ってくれると嬉しいんだけどね?」
兄の言葉に、司は呆れて肩をすくめた。
「それって折角柚真兄に手造りしてくれたお姉様たちに失礼でしょうが」
「そうか?」
「……何、考えて貰ってんの?」
司は肩をすくめた。
チョコレート――が、やはり標準的な商品であろう。しかし昨今、これに乗じて様々な商品を抱き合わせるのが流行っているらしく、その内容も年々エスカレートしていくように、司には思える。そもそも自分のモノになるかどうかも定かではない男に、何故ここまでできるのか、それがわからない。
手間と暇と金の無駄である。
―――――?
その時司は、あることにふいに気づいた。
――自分のものになるかどうか……わからない男。
バレンタインデイ、とはすなわち天下御免の大告白大会である。
となれば、兄は本日数多の女子から愛の告白を受けたことになるわけだが――。
「ねえ、柚真兄?」
「うん――?」
「あの、さ? そもそも――その……兄貴に『本命』っていうのは、いるわけ?」
我ながら、いままで気にしたことはなかった命題だった。だが、思えばいたっておかしくは無い話だ。
そう。
――いたっておかしくないんだ……わ。
確かに、そんな素振りを柚真人が見せたことはない。それどころか、あまり特定の他人と深くつき合うことが好きではないらしい兄である。けれどもし、『本命』が存在するのだとしたら、これだけのプレゼントの中にそれが入っていないとは考え難い。
狙った獲物を籠絡することなんて、兄にしてみれば極簡単なことのはずだ。
「なんだよ、急に?」
と柚真人が首を傾げる。
何故、そう思ったのかわからなかった。
けれど、ふいにそれが気になったのだ。
だいたい、柚真人の態度は、いくらなんでも女子諸君に対して失礼ではないか。告白それ自体は、いつどんな時でも、勇気が要るものだろう。
それをかったっぱしから十把一絡げにして受け取って歩くなんて無礼千万だ。
柚真人が、ひとつ嘆息して、司の方を見た。
「『本命』って、それ『好きな人』ってこと? ……おれの?」
「……普通はそうだと思うけど?」
普通。普通でなければ何なのだろう。それはよくわからなかった。だがそんな者の定義は、個人それぞれにしかわかり得ない。
柚真人が――笑った。真紅の花が咲き零れるような、微笑みだった。本当に本当に綺麗だと、見惚れずにはいられない、それ。司はそれに怯んだ。
「……なによ」
「おれに、いると思う? その、『好きな人』っていうのが」
「さあ。わからないけど」
「じゃ、――お前には内緒ってことにしておこう」
「――え?」
「だから、ないしょ」
そういって、兄は立ち上がった。
「そういう司は?」
と、柚真人がいうので、――司は紙袋から顔を上げて柚真人を見遣り、肩をすくめて見せた。
「ああ――」
生憎と、いいまのところ司にはそんな相手がいるという自覚がなかった。そのうえ目下、それほど暇でもない――悲しいことに。
「飛鳥ぐらいってところか」
「ご明察、去年と一緒。飛鳥君にはねだられたから……贈呈した。そんな馬鹿馬鹿しいことしてる暇ないし。……興味も、無いし」
「ああ。まあ――明後日――受験だもんな」
「そういうこと」
司は頷いた。
実際、同級生の中には卒業までには、と色めき立っている輩もいないではなかったが、それは司の知ったことではなかった。
高校受験が目の前なのだ。
「でも今日、緋月ちゃんには校門の前で待ち伏せされたよ」
緋月、というのは、皇の分家筋にあたる『暁』の次女の名前だ。司とは同い年で幼馴染み、そのうえ兄・皇柚真人には幼い頃からそれはそれはご執心の箱入りお嬢様である。
司はそれを聞いて少し複雑な顔をする。同じ受験生なのに、翌日に試験を控えて随分と余裕だ。
――バレンタイン・チョコレート、か。
「司も緋月も、どこの学校受験るんだ? 試験日は一緒だろ?」
司は、柚真人に自分が受験する高校を教えていなかった。
理由はない。
何となく、嫌だったからだ。
だから、合格したらわかるからといって、教えないでいた。柚真人の口振りからすると、どうやら緋月も受験校を内緒にしているらしい。しかし、柚真人はともかく司には、緋月の考えていることがわかった。どうせ、柚真人の通う、私立西陵高校に決まっている。
――柚真人さま! 春から同じ学び舎に通わせていただくことになりましたわ!
などと、もうそれはそれは嬉しそうにいってくるのだろう。緋月は好きだが、あの少女の、少々行き過ぎた時代錯誤な感覚にだけはどうもついてゆけない。
だいたい、なぜこの御時世に、『様』付けで人を呼ぶのだろう。
そのあたりの感覚は、微妙におかしいと思う。
「司?」
「だからいってるでしょ。合格したらわかるんだから、いいじゃない別に」
司はすげなく言い返した。
「まあな……。そりゃ、そうだけど」
なぜだろう。なんだか――嫌な感じがしたのだ。
柚真人の――『好きな人』。
それはもしかしたら、それはあの、筋金入りの国宝級御嬢様――暁緋月、だろうか。可愛らしくて、ふわふわしていて、とても綺麗な、彼女。確かに、柚真人の隣を歩けば、それは人目を惹くだろう。
――別に、気になるわけじゃない。
けれど。
緋月がそういってきたら、柚真人はどんな顔をするのだろう。
妹の自分が見たこともないような表情を、きっと、するんだろう。
――どんな?
「――着替えてくるよ」
柚真人が、そういって居間を出ていった。
叩き付けたくなるのを押さえて、静かに部屋の襖を閉める。
――ときどき……括り殺してやりたくなる……っ! あいつ……!
畳に鞄を投げ捨て、柚真人は唇を噛み締めた。
――『好きな人』――?
制服のネクタイを無造作に緩めて息を吐く。
笑顔と平静を保つことがどれほどの自制心を必要とすることか、わからせてやりたい。
――それを知ったら、お前は一体どんな顔をするっていうんだ!? ええ、司!?
謂われないことであることはわかっていた。
司は全然悪くない。妹である司の眼中に、兄である柚真人が入りようがないのはごく当たり前のことだ。
だから柚真人は、司を意味もなく責めてしまう自分が嫌いだった。司と一緒にいると、どんどん自分のことが嫌いになってゆく。
コートを掛け、ブレザーを脱ぐ。
唇をきつく引き結び、柚真人は冷たい掌で額を押さえる。
――……人の気もしらないで。お気楽なこと、ぬかしてくれる……。
これから食事の支度をして、両親たちはいつものように帰宅しないであろうから、司とふたりで夕食を済ませなければならない――何食わぬ顔で。
兄の、顔で。
――拷問だ――。
いつまで続けられるだろう、と思うと柚真人は遠い眩暈を感じた。
――こんな生活――拷問だ……。
2
試験の日は、朝から曇天模様で、天気予報は午後から雪になると告げていた。
☆
受験を終えると、橘飛鳥が校門のところで司を待っていた。
雪が、ちらつきはじめている。
ロングコートにマフラー姿の少年は、校舎から出てくる生徒たちの中に司の姿を認めると、手を振った。
「司ちゃん。どうだった?」
「うん――ありがと」
飛鳥と肩を並べて歩き出しながら、頷いた。受験校のランクとしてはかなり高い方だったが、なんとかなったという手応えはあった。けれど、一応滑り止めの受験と、都立高校の受験も控えている。
「まあまあ、かなあ?」
「柚真人に勉強、みてもらったりしたの?」
司は首を振った。
「全然」
「へえ? でもあいつ、学校じゃ成績トップなんだぜ?」
「でも――そうしたら過去問集とか見られちゃう。だから――優麻さんがいろいろ教えてくれてね。あの人、すっごい頭良いよね。さすがってかんじ」
「そりゃあ 弁護士だもん。大学だって国立だろ、確か」
緩やかな坂道を下り、駅へと向かう。湿気を含んだ大気がしんと冷え、雪がすこしずつアスファルトの路面を濡らしはじめていた。
「でも……合格したらわかっちゃうのに、柚真人にも。どうして隠したかったの?」
「……隠してたんじゃ、ないのよ」
「そうなの?」
「うん……。あ、ねえ、飛鳥君。いつから待っててくれたの? 寒かったでしょ、この天気だもんね?」
指先がそれとわかるほど白くなった手を擦り合わせている飛鳥に、司は訊いた。この寒空の下、何も外で待っていることなどなかったのに。
飛鳥は、気にすることはない、と笑った。
「僕、今日、受付と試験官やってたから、待ってたって程じゃないよ。君達の試験が終わってから。面接の時間だけかな」
肩越しに司を見て、飛鳥は目を細める。心配して貰えるなら、寒空の下で待っていたかいもあったというものだ。
「あの……、ごめんね」
「司ちゃんがあやまること無いじゃない。僕が勝手してるんだから。大丈夫。
司ちゃんと来年から同じ学校に通えると思えば全然だよ」
飛鳥は笑顔のままでそういうと、手にしていた傘を広げた。空色のそれを司の方へも半分差し掛ける。
「あ、ごめん」
司は、折り畳みの傘を、取り出そうとしたが、飛鳥がそれを制した。
「いいよ。駅、すぐそこだし」
どうやら雪は、本格的になりそうな気配だった。走り抜けていく車の車輪が、音を立てて飛沫をあげていた。日没が近づいて、気温が急速に下がりはじめている。
空が灰色まじりの青色に染まり出していた。この様子だと、雪は本格的になるだろう。
「僕に誘われて、同じ高校を受験するって決めたこと――柚真人に知られたくなかった?」
飛鳥がふいにいったので、司は黙った。
「……」
「司ちゃん?」
――私立西陵高校。
結局柚真人と飛鳥の通う学校が、司の第一志望校であった。
「……わからないわ。どうして兄貴に話せなかったのか」
「あいつ、ときどき意地悪いもんね」
それは一理ある。
完璧な兄の、辛辣な言葉は胸に刺さる。それは確かだった。
「煩いこと、言われたくなかったんでしょ。成績のこととか、勉強のこととか」
司は、その言葉に微笑んだ。
「そうかも」
「まあ僕は、司ちゃんと一緒ならいいんだけど」
従兄妹同士でもある飛鳥と柚真人、それに司と緋月の四人は、年齢も近く文字通りの幼な友達だったから、飛鳥といるのは、純粋に楽しかった。
だから、一緒にいられればいいと、いまは思う。
他に、――理由なんて無い――。
「飛鳥君」
「ん?」
「あの……ありがとう」
合格できていれば、いい。
司はその時、単純にそう思っていた。
帰りの電車は、ひどく混んでいた。
雪が降り出したせいかもしれない。それでなくとも、冬にはコートやジャケットで人ひとりのかさが増すというのに、濡れた傘でそれがさらに増している。
次の受験に備えて、司は参考書を開いた。もう少しの我慢で、受験生活ともとりあえず訣別できる。その先にある大学受験のことまでは、今は考えたくはなかった。時間が続いていて、否応なく次のことがやってくるのはわかっていた。だが、今は考えられない。
それだけの余裕は、ない。
これからのことなんて……あまりに遠い。どうなってゆくのかなんて、全くわからないではないか。
――柚真人に、知られたくなかった?
飛鳥の言葉が、ふいに耳の奥に甦みがえった。なぜか、どきりとした。答えにわからない謎かけに答えなければならないときのように、鼓動が早くなる。
飛鳥に――一緒の学校に通わないか、といわれたこと。
司の成績は一般にいえば上の中で、ある程度までは自由に学校を選択できる位置にいた。だが、特にこれといって絶対行きたいという学校がなかった。死ぬほど頑張って、最高峰に高く聳える私立高校や、大学附属の高校に合格したいということもなかった。大学受験はまた別にすればいいと、考えていた。それにどこへいったとしても、さしてかわりばえのする生活が待っているとも思えない。
だから、飛鳥たちと一緒の学校に通うのも悪くないかな、と思った。
共学で制服は可愛いし、自宅からはそこそこの電車通学で、途中には遊べるスポットもある。大学受験への実績も悪くなかったし、建物も綺麗だったしその他の施設もよかった。
普通の動機だと思う。
だが――なぜ、柚真人にそれを教えたくなかったのか、と聞かれればそれはわからない。
そう。取り敢えず、受験を終えて一段落つくまで、うるさいことをいわれるのが煩わしかったのかも知れない。 緋月あたり、大反対するだろう。緋月が柚真人と同じ学校を意地でも受験するであろう事は、簡単に予想ができた。
柚真人だって、何と言うかわからない。あまり仲のよい兄妹と言うわけでもないから、果たして賛成してくれたかどうか。
家庭の金銭的事情は良いほうだったが、それでも両親を思うなら、私立より都立だろう。
――やっぱり……煩わしかったのかな。柚真人、本当、意地悪いし。
司は、参考書の頁をめくりながら、ため息をついた。
――たぶん、そう。きっと、そうよ。
玄関に入ると、柚真人の靴があった。それと、小さなコインローファ。
柚真人が司より早く帰っており、居間には暁緋月がいるらしいことが、廊下の向こうからもれ聞こえてくる声でわかった。
少し高い、明るい声。
なぜかそれが、耳障りに思えた。うるさいわけではない。ただ苦手だな、といまさらのように思えたのである。
――一緒だったんだ。柚真人と――。
司は、居間には顔を出さず、そのまま部屋に向かうことにした。
その日から、翌日にかけては大雪となった。
3
それから二日後の合格発表の日は、湿った雪ががりがりに凍ってしまっていた。雪がやんだ後、天気が回復し、夜には晴れて放射冷却現象が起きたためだ。
その日の天気も――良かった。気温は低かったが空は遠く澄んでおり、気持ちがよかった。
☆
合格発表は、学校の体育館で結果の入った封筒を受験者に手渡しする方法で行われる、都のことだった。
司は、通っている中学校でも同じ受験校を選んだ生徒がいなかったので、ひとりだった。体育館に入ると、沢山の生徒がいた。友達と抱き合っている者、親と喜んでいる者、うなだれている者、それぞれだ。
受験票を手に、結果を配布している机に向かった。何人かの学校関係社らしき人が、机の無効にいて、ダンボール箱から封筒を手渡している。
そのときである――。
「司――!?」
呼ばれたような気がして、司は振り返った。
そして、そこに、めずらしく心底驚いたような顔をして司の方を注視している――自分の兄の姿を見出だした。
柚真人の隣には、小柄な少女。
緩やかな曲線を描く柔らかな髪が、肩のあたりでふわりと流れて、彼女も振り返る。柚真人の腕を取って――。
ほわり、とやわらかく微笑む。
その、有名私立女子中学校の可憐な制服に身を包む、絵に描いた天使のような美少女こそが――暁緋月、だ。
彼女は司を認めると、丸く目を瞠って、ちょこちょこと手を振った。
可愛らしいしぐさである。
「お前――どうして――ここにいるんだ?」
「まあ――。まあ、司。なんてことでしょう。驚きましたわあ」
ふたりが驚きの表情を隠そうとしないので、なんだか居所ない疎外感を感じて――しまう。
「あ――あの」
「お前、受験て――うちの学校だったのか?」
なんでだろう。
司は困惑した。
何か、小さい頃に悪いことをして叱られたときのような、そんな気持ちになった。柚真人が、司に向けたまさざしが、どこかで司を責めているように感じた。
それは、気のせいだったろうか。
「……なんだよ」
柚真人はそういって、前髪を掻き上げた。
「なんでそういうことを内緒にするか? ……まったく」
「あの――ゆ――兄貴――」
「それでか。このバカ。何で内緒にする必要があるんだよ?」
「まあまあ柚真人さま。で、結果はどうでしたの?」
にこにこして、緋月が言った。
「え……っと。まだ、なんだけど」
「じゃあ、はやくいってらっしゃいよ」
緋月に急かされたので、とりあえず司は封筒を取りに向かった。
☆
「はい。皇司さん。受験番号六六七番」
そういって手渡されたクラフト封筒は、わずかに重みがあって、司は合格したことを知ることができた。
安堵、した。
それでも一応中身を確認して、その場を離れた。
「どうでした?」
「うん。一応その……うん」
「あら!」
緋月は満面に笑みを浮かべて、司の手を取った。ぶんぶん、と勢い良く司の手を振り回す。
「おめでとうございます。よかったわね」
「ひ、緋月ちゃん――。あのね、わたし――」
「じゃあ、春から四人一緒ですのねえ。嬉しいわあ。楽しみですわねえ」
司は応えて何となく笑った。緋月も、合格したのだということが知れる。
緋月の嬉しそうな顔には、屈託がない。文句なく可愛くて、正直で、何だかわからないわだかまりを抱えている司は、わけもなく自分が嫌になった。
緋月は――喜んでくれている。
本当に。
否、自分だって――嬉しいはず。
「ねえ。制服、早く見てみたいですわ。司、背が少し高くて、涼やかで、かっこいいですものね。きっと似合うわ」
「……そんなことないわ」
「あら。わたくしと並んで歩けば間違いなくお似合いよ」
胸を反らして緋月が言った。
「ねえ? 柚真人さま」
「……まあ、そうだろうね。……君はちっちゃいし。司は背高さんだしね」
「柚真兄……」
どうして、緋月が――自分のことを嫌がるのではないかと思ってしまったのだろう。
「……飛鳥だな?」
柚真人が言った。
司は小さく首を縦にふった。
なぜだか、兄の目が鋭いような気がする。
「それで、うちの学校――受験ることにしたのか……」
「あのね、あの……」
「まったくあいつときたら」
そうじゃない――といいそうになった。
だが――いや、柚真人の言葉に間違いはなかった。飛鳥がそういってくれたから、受験を決めた。
そのはずだ。
「飛鳥さんて、司のこと、大好きですものね」
「飛鳥くんはみんな好きでしょう。みんな一緒がいいって、いうんだもの……」
「私もそう思いますわよ。嬉しいわ、司。でも、とにかく合格、おめでとうございます。ねえ、柚真人さま?」
「ああ――うん。合格、おめでとう」
「うん……」
けれどそういう柚真人のまなざしは。 笑ってはいない――少なくとも、司にはそう思えた。
形の良いその唇は、柔らかな笑みを刻んでいる。
だが、司を見る瞳の色が、酷く冷たくはないか。
――怖い、瞳……。
そんな言葉が相応しかった。
周りのざわめきがすうっと遠くなる。鼓動が早くなる。
――怖い? ……柚真人が?
司はふいに自分の脳裏をよぎったその感覚に戸惑った。
触れると、斬られてしまいそうな、薄い刃のようなまなざし。
血が、滲みそう。
――なぜ? 怖い? そんなはずは、ない。
触れることが、怖いのだろうか。
斬られることが、怖いのだろうか。
――おかしい。
イヤな感じだ。胸が、ざわざわする。
柚真人は、笑っているのに。
綺麗な笑顔。
ほころぶ花のような艶やかな笑顔。
なのに……。
司は、軽く首を振って、断続的な思考を遮断した。
何か、とりとめもなくおかしなことを考えていると思った。まるで、白昼の夢でも見るかのように。
司は混乱した。
「ねえ、司?」
緋月が柚真人の傍らで、小首を傾げる。
「同じクラスになれるかしら?」
「うん。……だと、いいよ、ね」
微笑む口許に、何故か力が――入らなかった――。
4
「で? ――何かね、柚真人君」
昼休みである。
呼び出された飛鳥は、柚真人とともに、校舎の屋上にいた。
「お前一体何考えてる」
手すりに飛鳥を追い詰め、柚真人は幼馴染みを詰問した。
「なにって別に。好きな子と一緒にいたいと思うのは、いけないことじゃないと思うけど」
柚真人がすうっと目を細める。
「好き? 司のことか?」
「そうだよ。他に誰が? ああ、そう怖い顔するなよ。僕だって何も受験強制したわけじゃない。誘ってみただけ。そうしたら司ちゃんが自分でこの学校を受けるって言ってくれたんだからね。文句があれば――彼女に言ったら?」
飛鳥が柚真人を睨み見返す。
「もっとも――」
す、と飛鳥は声を低くして首を反らせ、柚真人の耳元に囁くように告げた。
「柚真人。君に、意見する資格があるなんて僕は認めないけれど。だってそうだろう? 司ちゃんは、君の物じゃあないし」
「……っ」
そうだ。
飛鳥は、柚真人自身の中にある――禁断の真実を、知っている。
それを告白されたのは、高校受験の頃――去年の今頃だったろうか。
それを聞いた飛鳥は、本当に驚いた。はじめは笑って、何の冗談かと問いつめた。
柚真人は、飛鳥が司に少なからず好意を抱いていることを、もう知っていた。だから、そんなに牽制することはないじゃないか、といった。
だが、柚真人の答えは変わらなかった。
――おい、お前それ――まずいんじゃないのか? 本気、なのか?
――本気も本気だ。呆れたろう?
その瞳に宿るのは、氷の零度。冷たい凶気。
飛鳥はその時、寒気を覚えた。この綺麗な少年が本当に真剣であることを、悟らざるを得なかった。
――だって、それじゃまるで――近親――。
飛鳥がためらった言葉の先を柚真人は悪びれもせず継いだ。
――相姦。
柚真人は本気だった。
その時から本当に真剣だった。
罪であると自覚しながらそれを持て余し、自分で自分を抑えようともがき、耐えていることが、飛鳥にもわかった。 一蹴することはできなかった。
何故か?
当たり前だ。相手が誰であろうとも、気持ちのかたちに変わり在ろうはずが無い。飛鳥の中にだって、同じ気持ちが存在していた。だからだ。
厄介なことになりそうだ――飛鳥はそう思って本気で覚悟を決めざるをえなかった。柚真人が友人として好きだった。そして敬意を払うべき一族当主でもある。
だがそれでも、譲れないものもあった。
そして――はじまりは曖昧で幼い憧憬、子供のそれに過ぎなかったかもしれない『恋』が、ふたりのなかで成長をはじめた。
柚真人が、そう強いたのだ。
それは、自分でもそれとわからず、彼の焦りや苛立ちが招いた結果だったろう。
だが、――あとにはひけない。
こんなところで負けを認められない。
まして相手は彼女の兄じゃないか。
柚真人の瞳を見返し、飛鳥は唇にだけ無理矢理に笑みを刻んだ。
「どうする柚真人?」
柚真人は、今にも飛鳥を手すりから突き落としかねない気迫で、唇を噛んでいる。肩口をつかむ友人の手に、自然、力がこもるのがわかる。
「どうしろって……どうしろっていうんだおれに!?」
「諦めろ。お前、実の兄だろうがよ」
「――――――――っ」
もうすこしで――柚真人は、友人の顔を殴りつけるところ――だった。
☆
空が、遠い。
午後の授業の開始を告げる、本鈴が聞こえた。
――馬鹿野郎――。
コンクリートに座り込んで、飛鳥は空を見ている。
午後の授業に興味はない。
――なくなった。
あれから柚真人は、飛鳥を突き放すようにして、教室に戻って行った。
クラスの――いや、この学校中の彼を知る生徒があれを見たら、何と言っただろう。
いつも取り澄ました顔で座っている、成績優秀・頭脳明晰・容姿端麗――まるで理想の生徒の生きた標本のような彼が、あんな表情を持っていることは、誰も知らない。
――おれを、突き落とすぐらいのこと、してみせろってんだ。
そうしたら、少しは嫌いになれるかも知れなかった。そうしたら、自分はもっと残酷になれたかもしれなかった。
柚真人に縛られるこの今の状態から、自由になれただろう。
――否、……わかっている。
柚真人という人間は、そんな底の浅い奴じゃない。
見てくれは外面だけじゃない。
彼は真実完璧を具現している。
妹に恋をした――いうなればそれこそが唯一の欠損なのだ。
端麗をとおりこして凶悪でさえあるあの容貌と姿態。彼の本質は、それに見合うもので成り立っている。完全無欠・絶対無敵といわれれば、飛鳥はそれを否定しない。
陰陽清濁を合わせ持ちながら、己を律し、己のみを信じ、何事にも背を向けず――笑顔ひとつで人の陥落させ、視線ひとつで人を捩じ伏せる。
その術の悪辣さまでも熟知しながらそれをやってのけることのできる少年。
高校生とか、神社の息子とか、それ以前にそう言う存在だとしかいいようがない。
もちろん、彼と自分を比較して、己を卑下するつもりは毛頭無い。しかしだからこそ――気は焦る。
他ならぬ自分自身の心が、彼に拘束されているから。
負けるはずの無い勝負。
だが勝てる気がしない勝負なのだ。
「僕を失望させるなよ。……君はどう出る、優等生の柚真人君?」
5
――どうしてだろ……。
ぼんやりとソファに身を預けて、司は考える。
――合格。
喜んでいいはずだし、もっと安心してもいいはずだった。
けれど――。
自分は何かいけないことをしたのではないか。
訳もなくそんなふうに思えて仕方がない。
西陵からは、緋月と一緒に帰宅した。そしてそれぞれの中学に合格報告に行かなくてはならなかったため、途中で別れた。
「司、柚真人さまに受験のこと、内緒にしていたんですってね。心配していらっしゃいましたのよ、柚真人さま」
別れ際、緋月はそういった。
「心配ねえ」
するのかな、と思った。正直なところ、考えられない。
「あ、そうですわ。この間の――バレンタインのチョコレート。司も食べてくださいました?」
「?」
「柚真人さまにちゃんと言いましたのよ。司と半分コだって。だからあれ、半分は司の分ですの。まだでしたら召し上がってくださいね?」
ころころと、緋月は笑った。
「あ……、手作りなんだ?」
「当然ですわよ。私の愛情を見縊らないでいただきたいわ。私、貴女も大好きよ」
司の言葉に答え、緋月は、威張るように胸を反らせたのだった。
「ですから、あなたにも差し上げたいの」
「……ありがとう」
素直に礼を述べた。
その一方で、ますます自分が汚く思えて戸惑いを覚える。
何故、緋月のことを悪く考えてしまうのだろう、と思った。そんな自分に無性に腹が立った。
緋月は、従姉妹であると同時に大切な友達だ。
好きだった。
なのに、ここのところの自分はどうかしていた。おかしなことばかり考えて、ひとりでぐるぐる非健康な思考を暴走させている。そんな気がしてならない。
「美味しいんですのよ。柚真人さまのお料理には適いませんけど」
自信を持って自分を誇張するところだって、本当は潔くてとても好きなのだ。
自分を卑下しない。
他人を蔑まない。
それなのにあたしは――司はどういうわけかきゅうに悲しくなった。
「うん。帰ったら、柚真人から貰う。……まだ残ってるといいけど」
「ええ、そうですわね」
乗換えのホームで、反対斜線に滑り込んできた電車に、緋月は乗っていったのだった。
――柚真人に内緒にしていたから?
柚真人はそれを責めるだろうか。
だから、柚真人が一瞬見せた――司を責めるような一瞥が、心を穿つのだろうか。
――違う。
何かが違っていた。
このわだかまりは、何だろう。
目を閉じる。
瞼の奥に、飛鳥の憎めない笑顔が見えた。
それから柚真人の厳しいまなざしが見えた。
暁緋月に、腕を取られて、穏やかな表情で緋月を見つめる、兄。
――『おれに、いると思う? その『好きな人』っていうのが』
柚真人がいった言葉が、ふいに聞こえたような気がした。
――『じゃ、お前には内緒ってことにしておこう』
あの時、つきんと胸が痛んだ。
――『ないしょ』
つきん、と。
何か――見えない小さな棘が、――司の中の、どこかを刺したのだ。
一瞬。
脳裏に閃光が逸った。
試験の日――。
柚真人と一緒にいた緋月。
飛鳥と一緒にいた司。
その時、自分は。
何を思った?
――あの日、何故緋月と柚真人のいた居間に行けなかったのか。行きたくなくて、部屋に引き籠もってしまったのか。
そのとき――司は唐突に――気付いた。
緋月は、柚真人に対して好意を隠そうとしない。
それを見るのが――嫌なのだ。
苛々する。
司には、したくたって出来ないこと。
疎外感に包まれる。
だから、いたたまれない。
したく、たって。
できない、から。
――う、そ。
したく、たって。できない、のよ。あたしには。
――これって。
どくん、どくん、と心臓が暖かい痛みを刻みはじめる。
――まさ、か。
口許に手を当てる。
――あたしは。
それは、見てはいけないモノ。
それは、気づいてはいけなかったモノ。
――嫉妬、したわけ――――?
――まさか。嘘……。
自分自身が、心の中で空虚に呟く。
――嘘でしょ!?
だが。
それを否定する声が、自分の中から返って来ない。
皇柚真人――その整い過ぎた怜悧冷徹な横顔が、傲岸不遜な微笑が、眼裏に閃いた。
無差別に人をひきずり込む、比類無き凶暴なまでの美貌――あの、目の醒めるような冷たい空気――神主の衣装の清冽な白さ――袴の浅葱――瞳と髪の艶やかな漆黒――耳に心地好い、高く澄んだ声。
その姿を凄惨で悲愴なまでに綺麗に見せる、他の誰もがもちえない、あの独特の空気。
それは何者にも染まらない鮮烈なまでの透明度で、彼に触れるものを灼き、薙払う。
あの、ぴんと張った、弦のような危うさ。
背を伸ばして真っ直ぐ立つ時の、冷たく研ぎ澄まされたまなざしの強さ。
――嘘……。
何も彼もが、まるで覚醒の瞬間みたいに。
司を呪縛していく――。
――いつから……!?
――いつからなの!?
――一体、どうして!?
詮無き問いだった。
どう足掻いても。
それは司の中で絶対的に何者をも退けうるだろう。
彼の姿はいつでも見ていて辛いほどに美しく、神衣をまとって立つ時の厳しさはいつも妹であるはずの司の心を強く刺した。
冷たい、金属のように。
その胸の痛みの意味を、やっと理解した。
もはや他の誰にも代えられない。
他の誰でも意味などない。
鮮烈な痛みを伴って、記憶の色が変化する。皇柚真人という綺麗な少年の姿が司の中で傷痕になる。
心が、裂けてゆく。硝子が砕け散るように――粉々に――。
☆
「司――?」
耳元で急に名前を呼ばれて、びくっ、と司は硬直した。
柚真人だった。
学校から戻ったのだ。
「ゆ、ま、兄――」
「……合格、おめでとう」
廊下から居間の入口、襖の柱によりかかり、少し笑って柚真人が言った。
そのまま廊下に鞄を置き、肩を竦める。その表情は穏やかだ。
「まったくお前には驚かされたよ。それにしたってひどい仕打ちだ」
司が黙っていると、柚真人は小さく微笑んだ。
「……なあ。今日、まだ夕御飯まで時間があるからお祝いに、ケーキでも焼こうか?」
昼間とはまったくうってかわって優しい声音だった。それだけのことなのに安堵を覚えてしまう。そしてそれは、昏い罪悪感に変ずる。
「……」
司は――柚真人に。
責められることが、怖かったのだ。いや、拒絶されることが。それが真実。
「どうした?」
「ううん――な、なんでもない」
「チョコレートが沢山あるから、それとココアでチョコレート・ケーキにしよう。どう?」
料理の話になると、柚真人は本当に楽しそうだ。子供のようにわくわくしている。対照に司の中には絶望が広がりつつあった。それも、物凄い勢いで、急速に拡散して行く。
――柚真人と同じ高校を選ぶ動機が……欲しかっただけだったのね。あたし……。
心のどこかで、とっくに気付いていたことだ。
迂闊だった。
いま、気がついてしまうなんて遅すぎる。もっと前に気がついていたら。
絶対に柚真人と同じ学校など、飛鳥が何といおうと選びはしなかった。
――あたし……柚真人の事が。
そうするべきではなかった。
――柚真人の事が――。
だがもう、遅い。
司は、今日、もう入学手続きも済ませてしまった。今更どうにもしようがない。
誰にもいえない。
司は――柚真人の事に。
実の兄の事に。
――惹かれてしまった。
6
夜中、司は吐いた。
――あたしは報いを受けるのか。
トイレに屈んで咳き込みながら、思う。目尻に涙が堪ってきた。
――当然だわ……。
流れていく水を眺める視界が滲んでいる。
みぞおちがちくちくと痛んだ。頭の中で、心臓の音がする。
――どうかしてるわ。わたし、どうかしてる。
涙がこぼれ落ちた。
――助けて、柚真人。助けて、誰か……。気持ち悪い……。
――なんで、柚真人でないといけないの? どうしてこんなに……淋しいのよ!?
そう思うと、またきりきりと胃のあたりが痛みを訴えた。
――兄妹なのに。あたしたち、兄妹じゃない……。どうかしてるよ!?
トイレの壁にもたれて息をつく。背中が、ひんやりと冷たかった。
天井を仰ぐと、黄色く濁った電球が見えた。
目を閉じる。
脈絡のない考えが、頭の中に浮かんでは消えた。
幼かった頃の、記憶。それはいまや失われた楽園の記憶。二人が天使だった頃。
柚真人と司は、血のつながった兄妹だ。生まれたときからずっと一緒に育ってきた。
同じ親から、生まれたのだ。
生まれてからずっと一緒に。
――それなのに。
そう思うと、絶望で瞼の裏が赤く染まってゆく――。
赤く――。
真紅に――。
頭の奥がぴりぴりした。
――あ――?
一面の真紅の中に、何かが見え――。
見えた、ように思えた。
――何?
どくん、と心臓が跳ねた。
いけない。
警告。
警鐘。
唐突に、赤の色が濃くなった。止まらない。眼裏に深く鮮やかな緋色がどんどん広がってゆくのを、司は感じた。
鼓動が早くなる。
どくん。どくん。どくん。
違う、と司は思った。
これは、違う。
なんだろう。
急に不安になった。
体が、小刻みに震えだす。
なにかを考えていたわけではない。漠然と過去を憶っただけだ。
だが、司は、脳裏に拡散していった赤色に、本能的な嫌悪を感じた。
不吉な、色だった。これ以上、見つめてはいけない色だった。
天井の電球が瞼を通して見えたのではない。そんな物理的な色でなく、もっと禍々しい、脳の隅からじわりと染み出してくるような色彩だった。
体温が上昇する。
額の裏側がじんとする。
耳の付け根がずきずきする。
何だろう。
嫌いな色だ。
気持ちの悪い色だ。
けれど、司はその色を知っているような気がした。これは、記憶の何処かで整理されずに、強烈に灼きつけられたまま、置き去りにされた何かの断片だ。
まるで、褪せない血の、ように――。
☆
それは最悪の――二月。
――そしてきっと。
バレンタイン・ディは凍えた憶い出になる。
初めての恋が、潰れて消えたバレンタイン。
たくさんのリボン。綺麗なラッピング。両手一杯のチョコレート。
柚真人が抱えている、――たくさんの、たくさんの気持ち。
――お兄ちゃんて、とても綺麗ね。
――みんなが、お兄ちゃんのこと、好きなのね。
そんなことをいったのが、一体何時のことだったのか。
もう、憶い出せない。
――二月。
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