想い出はあの木の下で

さかき原枝都は(さかきはらえつは)

雨宿りは………あの頃と

 僕の目の前をオレンジ色のランドセルが宙に浮いて歩いている様に見える。

 毎朝僕の前を自分の躰がすっぽり隠れてしまうくらい小さな女の子が歩いていく。

 その子の名は岡崎夏美おかざきなつみ

 僕の家の2軒先の家に住んでいた子だった。

 いつも僕の前を歩き振り向きもせずに小学校に向かう。それでも毎朝僕の家に彼女は僕を迎えに来ていた。

 毎日、学校のある日。


 5年生のもうじき夏になろうとしていた時期、学校帰りに雨が降って来た。

 家の近くにある公園の大きな木。

 そこで僕は雨宿りをしていた。そこに夏美が濡れながら駆け込んで来る。

「ああ、濡れちゃった」

 そう呟きながら夏美は僕の隣で一緒に雨宿りをした。

 そしてその半年後の夏、夏美は死んだ。



 全く中間テストのヤマは全て外れた。

 今日渡されたテストは赤点だった。

「ホイ、斎藤昭さいとうあきら赤点な」

 数学の担当教師が僕の頭に答案用紙を乗せ、まったくと言った感じに手を離す。

 答案用紙はひらりと床に落ちた。

 37点―――その赤い数字が目に入った瞬間気持ちが滅入る。

「今回赤点の者は後で再テストを行う。それじゃ18ページを開いて」

 答案用紙を渡し終えると何事もなかったかのように授業が始められる。

 高校2年の中間テスト。

 進路査定にそろそろ影響を出し始める点数。

 大学進学希望………

 一応進路希望にはそう書いて提出しているが、これではいいとこ三流私立の大学しか行く道はなさそうだ。

 出来れば国立を目指したいが、現実はこんなものだ。

 そう自分に言い聞かせている自分がなんだか馬鹿らしく感じる。


 窓から入る風はもう夏を感じさせる風に変わっていた。


 数学の授業ほど先生の声が遠くから聞こえてくる科目はない。暖かい風にまどろみながら必死に眠気と戦いやっとの事で授業が終わる。


「おい昭これから俺らとカラオケ行かないか」

 友達の山崎敏やまざきさとしがカラオケに誘った。

「わりぃ、俺今日は帰る」

「なんだ付き合いわりーな」

 そんな事を言われても今日はカラオケではじけたい気分じゃなかった。

 帰り道駅を出ると突然雨が降り出した。

「やべぇ、雨降るんだったらあいつらとカラオケ行けばよかったかな」

 そんな事を思いながら家の近くにある公園の大きな木の下で雨宿りをした。

 雨は次第に強くなってくる。

「こりゃ、しばらくここにいた方がよさそうだ」

「はぁ」とため息をつき木に背を付けもたれかかった。


「随分重いため息ですね」

 ふと聞こえた声に目をやるがその姿はない。

 空耳か………

 そう思った時「あのぉ―――」とまた声がする。

 それでもその声の主の姿は見えない。

「おいおい―――」と呟いた時

 ちょんちょんと腕をつつかれた。

 ちょっと目線を下にそらすとそこに俺の肩位いの背丈の女の子………いや、きっと高校生だろう。多分俺とは違う高校だろう。ブラウスに制服のスカートをまとった彼女がそこに居た。


 一瞬ドキッとした。いつの間に………そ、それにしても小さい。

 175はある俺のちょうど肩の線くらいの背丈の彼女。しかもすべてがこじんまりとした作りの様に感じる躰。

 まるでちょっと大きめの小学生の様だった。


「嫌になっちゃうね、急な雨」

 ちょっと下をうつむき悲しそうに彼女は呟いた。

 そんな彼女を見るとブラウスは少し雨で濡れて透けていた。

 そんな濡れ透けていたところから彼女ブラのラインが浮き出ていた。

 思わず目のやり場に困り、また降り続く雨の線に目を向けた。


 彼女もこの突然の雨でこの木で雨宿りをしに来たんだろう。

 先に来ていたんだろうと思う彼女に

「済みません、僕も急に押しかけて………」と一言入れる。

「あら、押しかけて来たのは私の方よ」

 何気なく彼女は言った。

 初対面、多分そうだろう。でもこの公園のこの木で雨宿りをしていると言う事は、彼女も僕の家の近所にあるのか?

 それでも、何だろう初めて出会った感じがまるでしない。

 何か懐かしさを感じさせる彼女。

「この木、これだけ雨が降っても、この木の下だと雨にあたらない。すごいね」

 くりっとした丸い目を輝かせ僕を見つめて言う。

「ああ―――ええっと。そ、そうですね」

 このちぃさい躰にそのくりっとした目。髪は肩のラインでそろえていて、つくりは小さいけど、全体的には均等が取れているように見える。出る所もしっかりと出ているからなおさらそう感じるのかもしれない。


 まして初対面だというのに話しかけて来たのは彼女の方からだぞ。

 こんな今まで彼女いない歴17年のこの俺に―――

 普通、同じところで雨宿りしていて、見も知らずの人に気軽に声なんかかけるか?

 まずないだろう………普通。

 俺って、そんなに魅力的なのか? いや絶対―――にそんな事はありえん。


 雲の裂け目から陽光が差し込む。

 雨が次第に小降りになった……。


「雨、止んできましたね」

 その俺の言葉に帰ってくると思っていた声は、聞こえてこなかった。

 ふと見下げる視線の先には、さっきまで居た彼女の姿はもどこにもなかったからだ。


 ひとときの雨宿り。それは俺の心の中でずっと眠っていた、ある小さな思い出のかけらをよみがえらせてくれた。


 あの出来事。あの、いつも俺の傍にいてくれた女の子。


 岡崎夏美おかざきなつみ


 いつも、ずっと俺の傍にいるものだと思っていた夏美。

 あの小さい体でランドセルが、宙に浮いているような感じで歩いていたっけ。


「昭君。私ね……。昭君の事好きなんだ」


 そう言って夏美は俺の前からその姿を消した。

 この世界から。全ての人たちの前から。

 夏美は消えてなくなった。


 ◇◇


「ただいまぁ―」

 玄関にある一足の靴に目が向く。

 誰か来ているんだろうか?

「ああ昭、帰ったのね」

 母さんのいつもの声が返ってくる。

「ちょうどよかったわ。昭ちょっとこっちに来て」

 帰るなり俺は居間に引きずり込まれるように腕をつかまれ、連行された。

 そして、俺の目に今映りだされる人の姿を見て目を疑った。

 さっきあの公園の木の下で、一緒に雨宿りをしていた彼女が俺の家にいたからだ。


「昭覚えていない? ほら、小さい時お爺さんの所で一度会っているんだけど。並木香なみきかおりさん。母さんの従弟の娘さんよ。しばらく家で預かる事になったから昭もそのつもりで」

「はぁ! しばらく家で預かるって、一緒に暮らすって言う事なのか? 何も聞いてないぞ俺」

「そうぉ? 前に言っていたと思ってたんだけど。それよりちゃんとご挨拶しなさいよ。しばらくの間一緒に暮らすんだから、年も同じだし仲良くやってよ」

 ちょっと、待てよ! 年も同じだって、この果敢な17歳の男女が一緒の家に暮らすって、そりゃ―まずいだろ実際。いろいろと……。

 いろいろと……なっ。


 ちらっと彼女を目に入れる。

 椅子にちょこんと座っているその姿。

 ち、小さい。小柄な躰にさっき感じた出るところは出ているそのアンバランス感? まるで成長の早い小学生を見ているかのような、同じ高校生で同じ年とは思えないその容姿に、体が何となく熱くなつて来ているような、それでいてドキンと脈打つ心臓がおさまりをつけなくさせていた。


「あのう、ご無沙汰していますとでも言うべきなんでしょうか? 私も昭さんと幼いころお会いしていた事記憶にないんです。すみません」

「あ、いや……。そんなこと別に構わないです。俺もその、記憶にないんで。やっぱり初めましてなんだと思いますけど……」


 何言ってんだ俺。さっき会ったばかりじゃないか。

 公園のあの木の下で雨宿りしていたんじゃないのか。


「それより、あれから濡れませんでしたか? 小降りになっていたけど、まだ雨降っていたから」

「ええ、私傘さしてきましたから、大丈夫でしたけど。ここに来る前にどこかでお会いしましたか?」

「お会いしましたかってさっき公園で……」

「公園? 私公園には行っていませんけど」

「え、そんなはずはない。ついさっき公園の木の下で雨宿りしてたじゃないですか」

「ほんとうに私、公園には行っていないんです。途中雨には降られましたけど、駅からまっすぐここに来ましたから」

 彼女のそのクリっとした瞳が注がれる。

 その表情からも彼女は嘘を言っているようには思えない。

 じゃぁ、さっき公園で出会った人は誰だというんだ。こんなにも特徴のある人を俺は見間違えるほど鈍感じゃないと思っていたんだが……。

 あれは妄想? 数学の赤点が俺に見せた妄想か?

 いよいよ俺もやばい状態に突入してきたんじゃないだろうな。それほどまでに今日の赤点が俺を惑わせているとは思ってもいなかった。


「はぁ、まぁいいや。とにかくよろしく」そう言って自分の部屋に行こうとしたとき

「昭さん、私明日から昭さんと同じ西宮高校に編入することになりました。住まいも学校も一緒でいろいろとお世話になりますけど、どうかよろしくお願いします」

 その小さい躰で頭を下げられると、何となく小さい子を俺がいじめているようなそんな罪悪感のような気がして、落ち着かない。

「そ、そうなんだ。こっちもよろしく。まぁここに居るのは一時なんだし。そんなにかしこまらなくても大丈夫だだよ」

「はい、ありがとうございます」

 にっこりとほほ笑む彼女の顔を見た時、また眠っていた想いが湧き上がってきた。

 その想いは俺の胸を少し締め付けた。


 突如に俺の前に現れた並木香という存在。彼女の存在がこの俺の中で眠っていたあの想いを再び蘇らせるとは、その想いが本当はこの俺がずっとひたむきに抑え込んでいた想いだったということを、俺はまだ知らなかった。


 彼女との生活が始まってもう1か月が過ぎた。ふたを開けてみれば並木香は俺と同じ高校で、しかもクラスも同じになった。

 ここまで彼女との接点がありすぎると、少し俺的には鬱陶しさを否めない。

 家も学校もクラスも一緒。四六時中彼女といつも一緒であることに反発心を持つ反面、どこかでホットしている自分が存在していることに気が付き始めたのは、あのことがきっかけだったのかもしれない。





 ある日、俺は夢を見ていた。その夢はもう忘れかけていた遠い過去の夢だった。

 夏美がランドセルを背負い? 見た目にはランドセルに背負われているのは夏美の様に見える登校風景。

 懐かしがこみあげるのを夢の中でも感じることが出来るんだと、俺は初めて知ったような気がする。その夢に出る夏美はずっと笑顔でいた。

「昭君、早くおいでよ! ねぇ昭君今日は暑いね」

 あの頃の夏美の声が鮮明に聴こえてくる。

 二人であの公園の木の下で突如振り出した雨をしのいだ雨宿り。

 その時、俺は夏美のほっぺにキスをしていた。

 ものすごく恥ずかしかった。

 それでもこのまま、雨が降り続けてくれることをどこかしか願っていた俺がいた。

「昭君、私昭君が好き」

 夏美から最後に俺に送ってくれた言葉。

 俺は自分の夏美に対する気持ちを伝えることなく……いや、伝えることが出来ずに夏美はその存在を消し去った。

 病室で会う夏美の姿はあっという間に変わり果てた。

 夏美に言いたいこと伝えたい事いっぱいあった。でも俺は夏美に何も伝えることが出来なかった。

 遺影に映し出された夏美のあの姿を俺は見ることすらできないでいた。

 もう夏美はいない。俺の前を歩くあの姿を二度と見ることも触れることも出来ない。

 悲しみだけが俺の中に残った。その悲しみを俺はいつしか心の奥底に自分でしまい込んでしまったんだ。

 そうすることで夏美の事を、夏美がもう俺の前からいなくなったという事実から逃げるために。

 そのしまい込んでいた想いが、一気にあふれ出したように夏美は夢に現れた。

 俺にこんな夢を見せたのはきっと並木香だろう。

 彼女を見ていると、どこか夏美を思い出してしまう自分に苛立ちさえ覚えてしまう。

 悲しみをまた掘り起こされたくないという思いが、そうさせていたのかもしれない。


 そんな並木香とは距離を置きたかった。

 それでも彼女は、一緒にいる時間が長くなればなるほど、俺に近づいてきた。


 季節は初夏から、夏えと変わりゆく。

 青い空に真っ白な入道雲が描かれる真夏の日々。

 並木香はクラスの中にすでに溶け込んでいた。そんな彼女を俺は見て見ぬふりをしながら避けていた。

 あの夢を見てから俺の脳裏には、夏美の姿がまた幾度もよみがえるようになっていた。あまりにも似すぎている並木香のその姿に俺は、夏美の姿を映し出していたのかもしれない。

 もし、並木香が夏美であったのなら……。そんな現実でもないことを想像するようにさえなっていた。

 なぜ、俺はこれほどまでに夏美の事を今になって思うようになってしまったんだろう。

 ある日俺は突如に降り始めた雨をしのぐため、またあの公園の木の下で雨宿りをしていた。そこへ並木香が傘を持って俺の前にやってきた。

「やっぱり、昭君ここに居たんだ。急に雨降ってきたからもしかしてここで雨宿りしてるんじゃないかなって。はい、傘どうぞ」

 俺はそんな彼女を見つめながら

「どうして俺がここに居ると思ったんだよ!」

「どうしてって、何となくよ」

「何となくって、ここで初めて会ったのも否定されたのに俺がここに居ることを何となくでも思えるのかよ」

 俺は差し出された傘を受け取らなかった。


 そんな俺を見かねたように並木香は俺の隣に並び、この太い木に触れながら

「私ね、昭君が前に私がここで一緒に今みたいに雨宿りしたって言ったでしょ。ほんとうに覚えがないんだ。でもね、あなたにそう言われた時、ここのこの木の事物凄く懐かしく思えたの。こうして雨宿りしたことないのにね。昭君あなた、好きな人いたんでしょ。その人とこうしてここでよく雨宿りをしていた。そしてその人は私によく似ていた。だから昭君は私の事をいつも避けていたんだよね」


「そんなことお前に関係ないだろ」


「そうだけど、でもここに来ると物凄く懐かしいんだ。あれから一人で来てみたの、初めてなんだけど、昔私もここで誰かと雨宿りをしていたような気がした。その人の姿はぼんやりとしか浮かばないんだけど不思議よね、その人がだんだんと昭君だと思えてきたの。おばさんが話してくれたの、岡崎夏美おかざきなつみさんの事。昭君の家の2軒となりで今は空き地になっているところに住んでいた子だって。その子と昭君仲が良かったていうの。小学校の時夏美さんが病気で亡くなって、ご両親も引っ越されてその家も解体されちゃって、何にもなくなっちゃったんだけど、昭君よく夏美さんの家の前で泣いていたって」


「うるさい! これ以上俺の中に入ってこないでくれ」

「ご、ごめんなさい」


 俺は並木香に怒鳴った。

 彼女を残し降りしきる雨の中俺は走った。ずぶぬれになりながら。

 どんなに濡れても俺の心の中は癒されることはない。

 癒されるどころか、悔しさと後悔が湧き出てくる。

 俺は、俺は一言夏美に言いたかった。


「俺も夏美が好きだ」と。


 その一言を俺は伝えられないまま、夏美は死んでしまった。

 だから、夏美の事はずっと胸の中でカギをつけてしまい込んでいた。

 伝えたかったその一言をただそれだけだった。


 雨に濡れたせいだろう、俺はその晩から熱を上げてしまった。

 うなされる俺のひたいにやさしく触れる手の感触を感じた。うっすらと目を開けると、あの頃の小さな夏美が俺のひたいに手を添えてくれているような感じに見えた。

「夏美……」

 でもきっとそこにいたのは夏美じゃない。

 それでも俺はその触れる手のぬくもりを懐かしく感じていた。

 多分俺の傍にいてくれたのは並木香だろう。

 俺がどこかで勝手に並木香を夏美と思い込んでいたのかもしれない。

 悪いのは俺なんだろう。

 熱でうなされる中、並木香が言った一言を俺は耳にした


「私、昭君の事好きになってもいい?」


 そのまま俺は気を失うように眠った。


 夢を見ていたんだと思う。

 あの公園の木の下で俺と夏美は雨宿りをしていた。

「昭君雨やまないね」

「そうだね。でもこの木の下にいると濡れないから大丈夫だよ」

「でもこのままだとどこにも動けないね。昭君、どうして動こうとしないの? 雨に濡れるのが嫌なの? あと少しでこの雨やむはずだから、そうしたら昭君、ここから歩き出そうよ。ずっとここに居ちゃだめだよ。昭君はちゃんと前に向かって歩かないと」

「でも僕一人じゃないでしょ。夏美ちゃんも一緒だよね」

「ううん、私はもうここから動くことも、前に進むこともう出来ないんだ」

「どうして?」


「どうしても……」


「僕も夏美ちゃんの事好きなんだ。だから一緒に行こうよ」

「ありがとう昭君。私も昭君の事好きだよ。でもね、昭君とはもう一緒にいることできないの」

「僕のこと好きになのに、どうして……? どうして一緒にいちゃいけないの?」


「そんなのいやだよ!」


 それでも……。バイバイ、昭君。


 きっとまた巡り合うことが出来るから。私は信じている。また私と巡り合うことが出来たら、その時は昭君のその気持ち一杯私に頂戴ね。


 その時までさようなら。


 熱が下がったのはそれから2日後だった。




 夏の日差しが降り注ぐ暑い日。

 公園のあの木の下はその光を幾分遮ってくれる。

 少し風が体をまとうように吹き抜けた。


 昨日、この木の下で雨宿りをした。


「こりゃ、しばらくここにいた方がよさそうだ」

「はぁ」とため息をつき木に背を付けもたれかかった。


「随分重いため息ですね」

 ふと聞こえた声に目をやるがその姿はない。

 空耳か………

 そう思った時「あのぉ―――」とまた声がする。

 それでもその声の主の姿は見えない。

「おいおい―――」と呟いた時

 ちょんちょんと腕をつつかれた。

 ちょっと目線を下にそらすとそこに俺の肩位いの背丈の女の子、小学生? ………いや、きっと高校生だろう。多分、それにしても小さな子だ。

 いつの間にこの子は来たんだろう。誰もいなかったはずなのに。


「ねぇ、昭君。もう少しで雨やむよ。そうしたら、昭君は前に進んでね。もう私の事はいいの。いつまでも私を思っていちゃダメ。さようなら……。昭君」


「夏美?」

 もう彼女のその姿はなかった。


 昨日、俺はこの木の下で失恋した。


 幼いころからずっと好きだった夏美に。


 夏美が言っていた。

 俺は前に進まなければいけないと。

 今日俺に反射する。真っ青な空から照り付ける太陽の光は、雨に濡れた心を軽くしてくれた。

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想い出はあの木の下で さかき原枝都は(さかきはらえつは) @etukonyan

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