第6話 日々送るある日の朝から

 この世界に来てから、正確にはわからないけど数週間ほどたったように思える。

 日にちを数えておけばよかった。


 一人暮らし? を初めてから、色々不安だったが、結果としてはピピ達のお世話になっている。

 食事を作りに来てくれ、洗濯をしてくれ、掃除をしてくれた、相変わらず香油も塗られる。

 ピピも、毎日顔を出して様子を見てくれる。


 あまりにやる事がなくて、散歩にでも行こうかとしたら、そばに居た兵士に止められた、何か家のガードもしていてくれてるらしい。

 そんなこんなで、また太った気がする。


 ふっと思った、……なんだこれ? 最初は大事にしてくれてるのかとも思ったけど、閉じ込められてる? 何のために?

 まぁ、いいや、食うのに困らないのはよいことだ、色々文句言われるわけでないしな。

 そんなこんなで、この世界でも引きこもりだ。


 今日も朝からピピたちが来てくれた、朝飯はスープの様な物だけだった、変わった味がした、何時もは結構色々出してくれていたんだけどな。

 で、何事もないかと思ったら、腹を壊してしまった、朝のスープがいけなかったんだろうか? 変なものを食べさせないと思うけど。


 一日中トイレと友達になった、昼飯も夕飯も夜中にも、ピピ達が来て同じスープを飲ませようとしてきた、一度断ったんだが、通じてないのか無理やりに飲ませようとしてきたので、仕方なく飲んだ。


 朝になるころには、すっかり衰弱してぐったりとしていると、今度はドロッとしたシチューの様な物を持ってきて、飲めと手振りで伝えてくる。


 さすがに、「ふざけるな!」って怒って抵抗したんだが、押さえつけられ、青臭くて口の中に苦みが残るそれを無理やり飲まされた。

 気持ち悪くてむせて、急に目の前が暗くなり、気を失ってしまったようだ。


 気がついたのは、荷台の上、どうやら荷車に乗せられてどこかに連れていかれているようで、周りには彼らが居てピピの姿も見えた。

 体が動かない、ぼんやりと目ぐらいしか動かせない、体が痺れているのか、力が入らない、それにどうやら縛られているみたいだ、荷台から落ちないようにだろうか。

 景色には見覚えがあるように思えた、いつか行った山頂の寺院に向かっているような気がする。


 あぁ、寺院か、ゲームとかで状態異常治すのとか、寺院に行くからそんな感じなのかな? 俺は変な病気になって治しに連れて行ってくれるのだろうか? そんな考えとは別に、何か心の中でモヤモヤとした不安が広がっている。

 その不安が何なのか、今は頭がボンヤリとしていて思いもつかない。

 そんな事を考えながら、俺はまた気を失ってしまった。


 次に気がついたときは、寺院の中だった。

 あの、大きな像の前の台の上に寝かされているようだ、縄は解かれているけど体が痺れて動かせない、首が動かせるようになっていたので、周りを見渡してみる。

 巫女っぽいのが何か祈りを捧げ、ピピ達が跪いて声を合わせている。


 病気を治すのに、呪文を唱えてるのかな? と思って、目を閉じて待った。

 不意に合唱が静かになり、何か片づけるような音がした。


「終わったのかな?」


 目を開けると、石で出来ているナイフを振り上げている巫女の姿があった。

 殺される?!

 冷や汗が流れる、痺れてうまく動かせない身体を、無理やり動かし転がった。


 身動きできないまま、布を纏わりつかせ落下していく。


 俺は、あの大きな像の前の、暗い穴の底に落ちて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る