第5話 山頂にある白き寺院から

 山頂に立つ白い壁の大きな建物。


 空気が違うっていうか、雰囲気でそう思うのかもしれないけど。

 建物の大きな入り口には、白いローブのような服を着た、いかにも巫女とか神官ですって感じの、10人ほどの女性が俺たちを待っていた。


 ピピ達は挨拶をした後、何やら話していた。

 手を引かれて、中に入って行くと大きな部屋、思った以上に明るい、天井にぽつぽつと何か埋め込まれているのか、それから外の明かりを取り込んでいるようだ、壁には絵が描いてある、壁画っていうんだっけ。


 そして正面には、黒く巨大な像があった。


 それは、ピピ達の姿ともちがう、俺の世界の生き物でもこんなものは居ないだろう。


 高さ5mほどもあるそれは、見た事もない生き物を模った、無理に例えて言うなら 四肢の部分に蛸や烏賊の足の様な先端が分かれた触手が何本も生え、それを纏った巨大な立ち上がったトカゲ だ。

 目の部分は、宝石だろか? 光を受けて輝いている、体の部分も何か塗られているのだろう、ぬらぬらと光沢がありとても不気味だ。


 唖然としていると、ピピが壁の前まで手を引いて俺を連れていく。

 壁画を、指さしながら何か話をしている。

 描かれているのは、こんな感じだと思う。


 天空から、あの像の生き物たちが乗った、炎のように光輝く球体が降りてきて、ピピ達の先祖に文化を教えた、文字や数、住処や道具の作り方、ピピ達の先祖たちの暮らしは向上し、彼らを崇めた。

 彼らの一人が倒れた(病気か何かだろうか?)、他の者たちは、倒れた一人を残し、来た時と同じように光の球に乗り、天に戻って行った。


 ふーん、元の世界でも『空から来た神様が色々としてくれた』みたいな神話はあったよなー、そのたぐいだろうか?

 それにしても、何ともいえない生物だなぁ、まぁ知的生物がみんな人型何て傲慢な考えなんだろうし、ホントに色々いるのかもしれない。


 ここは、彼らを崇める神殿か寺院のようなものらしい。

 彼らは明確な目的はなくて、面白半分になんかしていったのかもしれない、唐突だし。

 残った一人? はどうなったんだろう? 死んだから残していったのかもしれないな。


 壁画を見ていると、巫女っぽいのが大きな布と果物や野菜などを持ってきて、像の前にある大きな石造りの台の上に置きだした。

 ピピが何やら説明しているようだ、たぶんお供えだろうなと思い、うなずいておく。


 みんなが跪きお祈りしだしたので、マネしておいた。

 御祈りが終わると、巫女たちがお供えの置いてある台と像の間にある、大きな板を取り外し、そこのぽっかりと開いた大穴に、敷いてある布ごと投げ込んだ。

「え?」と思ったんだけど、そういうもんなんだろう。

 信仰対象に対する供物ってやつだね。


 それから、俺たちは町に帰るのに、寺院を後にしたんだが、下りがまた大変だった。

 何度も転びそうになり、ピピ達に呆れた顔をされた、転がってった方が速いとか思われてるんだろうなぁ。


 新しい家について、ピピ達は帰って行ったが、お付きの人が何人か残って食事を作ってくれた。

 料理なんて作ったことが無いから、正直助かった。

 明日からはどうしよう。


 食べる物の心配しないと……、仕事をするようになるのか? ここでの仕事か。

 狩り……は、無理かな、畑の手伝いとかもきつそうだし。

 何か手伝えることを探して手伝うかな、さすがにちょっと悪い気がするし。


 とりあえず、寝るか。

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