第4話 助けられた彼女の町から

 小鳥の鳴き声で目が覚めた。


 いや、違った、彼女が起こしに来てくれたようだ。

 数人のお供の女性といっしょだ、ひょっとしてこの家のお嬢様か何かだろうか?

 食事を持ってきてくれたらしい。


 とりあえず、彼女に[ピピ]と名前を付けた、当然心の中でだけど。


 食事が終わると、お供の人たちがお湯と手ぬぐいの様な物、あと着替えを持ってきてくれた。

 ピピが、体を拭け、と身振りで教えてくれる。

 うん、臭いのかな? デブだから臭い? うん、臭いよね、自分でも臭い。


 体を拭き終わったのを教えると、今度は何か油の様な物を持ってきた。

 草とか花とかが入ってる、香油ってやつかな? 虫よけかな? ピピが体に塗るように身振りで教えてくれる。


 服を脱ぎ自分で塗ろうとしたんだけど、お付きの人たちが塗ろうとしてくる。

 やめて! 恥ずかしいから! 今パンツだけだから! 触るとくすぐったいから!

 抵抗したけど、集団で塗られた、うぅ、恥ずかしい。

 ピピ達と違う気がするな、彼女たちが使ってるのは、ミントのような匂いがするし。

 どっちかって言うと、香辛料? 男用? 匂いはいいんだけど。


 着替え終わると、ピピが手を引いて町中を案内してくれた。

 お供もぞろぞろと、付いてくる、大名行列か。

 俺が何かしでかすか心配なのか?


 鍛冶や木工の工場、機織り場、滑車を使って重い荷物を運び、驚いたことに、水道を作り山から水を引いていたりもしていた、安定した生活をしているんだろう。

 文化レベル結構高いね。

 あれやこれや教えて尊敬されたりするのは、俺の知識じゃ無理っぽいな。


 町の案内を終えて、残りを小屋の中で過ごす。

 やることも無いので、ゴロゴロと寝て過ごす。

 ……うーん、何かしなくてもいいのか? せっかく異世界に来たんだから、何かやることがあるんじゃないか? 何せ暇だし。


 魔王とかいるのかな? 今の状態で戦って勝てるのか? Lv上げとかするのかな? 居たらこんなに平和じゃないか、でも最初に会った白い気持ち悪い奴ら……あいつ等は、見た目からしてやばそうだしなぁ。

 うーん、何するか、なんも思いつかんなー。


 俺はまだ、ここの人たちは【なになに族】みたいな種族で、他に俺みたいな【人族】みたいなのが居て、会えるのではないかと期待はしている。

 エルフとかドワーフとか魔族とか、魔族……は怖いからいいか……いや、美人でボインボインのおねーちゃんとかなら会いたいな。


 夕食を終えたら、体を拭き、また香油を塗られた、日課になるらしい。

 横になっていたら、いつのまにか寝てしまっていた。


 今朝もピピが起こしに来てくれた。


 その日、ピピに連れられて来たのは、町はずれの小さな家だった。

 中に入ると土間にナガシとカマド、水瓶などがある、板張りの部屋は8畳くらいか、風呂はないけどトイレはある。


 どうも俺のサイズに合わせて、急いで改築した家らしい。

 トイレはピピの屋敷で借りたけど、ここの人たちサイズだから狭かったので、これはうれしかった。

「これからは、ここで一人暮らしってことかな? 食事とか自分で作るのか……やった事ないな」

 そんな事を考えていると。


 ピピが、俺の腕を引っ張ってきた、まだ他に行くところがあるようだ。

 集落から続く石畳の道の先の山それを指さして何か言っている。

 その山の上の建物に向かうようだ。

 遠めだが、白い立派な建物だ。


 小さな石垣がぽつぽつと有り、大きな畑が広がっている、畑作業をしてる人たちもいる。

 見た事もない、大きな牛のようなヤギのような毛の長い角がある生き物で耕したり、食事の時にあった野菜みたいなのを収穫したりしている人たち。


「のどかだなぁ」

 周りをキョロキョロと見渡しながらつぶやく、牧歌的ってゆーのか、こーゆーの。

 大人数で、山頂まで持って行くのか荷車に荷物を載せて、ぞろぞろと歩いていく。

 俺も、荷車にのせて運んでくれないかなぁ、歩くのきつい。


 山の麓に着くころには、疲れて息を切らしてしまった。


 道は広く、整地されていたけど、うねうねと何回も曲がりくねって、山頂まで続いていた、寺院に着くまでに何十回休んだことか。

 ピピたちは、呆れた顔をしていたようだが、後ろから押してくれたり、手を引っ張ったりして付き合ってくれた。

 山頂に着くころには、昼を過ぎた頃になっていた。


 山頂には、土壁を白く染めた、大きな建物が立っていた。

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