ssh 10.0.0.2/24 対策拠点

「いや、だ~か~ら~さ~!!」


講義を終え、いつものアパートの一室に足を運ぶ。

中に入ると、キッチン奥の扉の向こう……リビングから女性のイライラしたような声が聞こえてきた。


「使い終わったら既存プロバイダのゲートウェイ閉じとけよ!なんで開けっぱにするかなー、このズボラ!!」


そんな暴言に、別の女性の声が聞こえる。


「しゃーないやん!!ネットワークないとDNSに登録されたか確認できんし!というか、DNSの登録おそすぎやねん!!」


そんなケンカのさなかにオレが帰ってきてしまったわけだ。


「今度は何もめてんの?」


「ちょっと巧馬たくま聞いてよ!このアホ、また既存プロバイダのゲートウェイ閉じ忘れてたんだよ!?ありえなくない!?」


最初に叫んでいた女性……降谷 数音ふるや かずねが同調を求めてくる。

スラッとキレイな微曲線を描く身体に、今は怒っているが、何処か優しげな面影を感じる器量。

茶色のキレイなロングヘアーの間から見える耳は、人間のものとはかけ離れているが。

そう、たぬきの耳だ。


「や、だーかーらーなー?IP割り振るためにDNSに潜っててん!ISP既存プロバイダ使えないならAS自律システム作らなあかんやん!!そもそもネット回線引いたの誰やおもてんねや!!」


数音に怒鳴られていたもうひとりの女性…小田喜 彩おだき いろはは、

数音よりキリッとした顔立ちだが女性としての魅力は揃っているし、関西弁だ。

ブロンドのショートヘアから見える耳はこれまた人間のものではなく、狐のものだ。あと関西弁だ。


「そもそもつながったとしてもや。ルーティングが一発目からうまいこと行くわけないやん?どうせまたISP既存プロバイダのゲートウェイ開けなあかんよ。」


「それでも毎回閉じなさい!!なんのために秘密裏にしてるのかわかんないじゃない!!!」


全ては偶然だった。

自分たちの通信データが、この国の1台のサーバに集められ、すべてが蓄積されていることを知ってしまい、困惑、不快感、そして裏切られたような虚無感と怒り。

そんな気持ちを落ち着けるためのんびり散歩をしていると、偶然この二人、

数音といろはにであったのだ。

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hominum-automata 水波形 @suihakei

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