防波堤

呼吸を整える。

傘の柄を握る。

窓辺の風鈴が鳴く。


瓶の喉元に揺れるビー玉が

コップの花の涙腺の氷が


ゆらゆら揺らぐ陽炎と

夏風が掠める麦わら帽子と


君の名前が形を持たなくて思い出と一緒にさらわれていく


どうしようもない時間の中で

君の顔が僕の瞼の裏にずっと嵌らないパズルの様に佇んでいる



首元を仰ぐ。

水溜りを掬う。

いつか置いていった蝉の声が泣く。


貸してくれたハンカチを

割れた貝殻のドレスの人形を


入道雲の影に隠れた君は

2つの指の間を縫う汗は


何も意味を持たないよと笑うから僕はずっと首を振り続けて此処に座って居る


どうしたって届かないあの夏を

君の言葉がこのビー玉に詰め込んでくれたから



いつか、なんて、考えながら夏を仰いでしまう。


ふたりが手を伸ばした青色。




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