第14話
「正直形のないものに対して価値のあるものと交換するという概念が理解できないので。」
アーラさんは信用貨幣を全然信用してなかった。
「え……今までこんなに教えてくれたのになんで?」
レティちゃんをさっきまでお金必要なんだよって話を説明してもらった後の見事な
アミティちゃんが「ならお金のお勉強要らないからお外で遊びたーい。」
とブー垂れていた。周りの子供と何して遊ぶと相談し始めた。
「アミティ、レティ。教えた意味はあります。もしあなた達が大きくなって外の世界に出た時に、お金が当たり前に使われている所でお金を知らないととても困ることになりますから。
わたし達の村で一生生きるならほとんど要らない知識ですがね。この村でお金を使っているのは商人さんだけですよ。」
「あー!香辛料の人!」
アミティちゃんが叫んだ。
この村にも商人さんがいるらしい。
確かに食べた料理には香辛料が沢山使われてたし、そういうのを仕入れてくれる存在かもしれない。
「じゃあお金の意味がわかったところで今日のところは終わりにしましょう。もしお金についてまだ気になるなら商人さんが帰ってきた時に聴いてみるといいでしょう。」
「きりーつ。礼。」
アーラさんが話を言い終える前に食い気味でアミティちゃんが
アミティちゃんは早く遊びたいんだなと微笑ましい気持ちになると同時に、終わりの挨拶があるのかと驚いた。
僕を含めた皆んなが立って、礼をする。
「「ありがとうございました。」」
低学年の挨拶特有の声が揃わず バラバラな感じが出ていて、ちょっと笑った。
「どうでしたか?私の話は少しは為になったでしょうか?」
授業が終わって、子供達が皆んながやがやと騒ぎながら教室を出る中、ポツンと机に座ったまま残った僕にアーラさんが話掛けた。
アミティちゃんは早く遊びたいのか速攻で何人かの子供達と走って外に出て行った。話しかけてもらえなくて少し、いやかなり寂しかった。まぁ遊び盛りだからと自分に慰めの言葉をかける。
「はい。向こうの世界にもお金はあったんですけど、何であるかとかは考えてなかったから面白かったですよ。」
「それは良かった。何分異世界というのはよく分かりませんからね。タローさんにとっては未知の事ばかりだと思います。この世界の基本的なことを授業では説明しているので気が向いたらいつでも聴きに来てくださいね。」
「もちろんです!」
何よりアーラさんに当てられる幼女達が可愛かった。許されるのなら毎回来るに決まっているじゃないか。
「ところでアーラさん。失礼なことを聴いてしまうかもしれませんが、此処にいる子供達は皆んなアーラさんの子供さ何ですか?」
「ええ。そうですよ。此処にいる子は皆んな私の子です。」
アーラさんが即答するが、僕が聴きたいのはもっと根本的なところだったんだけど……。
これは聴くなということなのかなと口をもごもごさせているとアーラさんはプッと吹き出した。
「すいません。大変面白い顔をしてらしたので。つい笑いが。」
アーラさんはそう言って口を押さえた。
僕の言い悩む顔はそんなにも#珍妙__ちんみょう__#だったらしい。
そうですかそうですか。
「結論から言えば、私はこの子達の本当の産みの親という訳ではありません。
タローさんの聴きたいことは分かっていました。
ですがお腹を痛めていなくとも、それでもあの子達を「私の子供ではない」とは言えなくて……。申し訳ありません。」
アーラさんは頭を下げた。そして僕はそんなことを聴いてしまったことを後悔した。
「いえ。僕から見てもアーラさんは皆んなの母親ですよ。」
「んー。そう言われると喜べばいいのか、そんなに老けて見えますかと怒ればいいのか悩みますね。」
「そういえば何才なんですか?」
「19です。」
僕より年上なのはなんとなく分かっていたけど、まさかそんなに若いとは。
「まだ若くてピチピチな私だったからまだ良いですけど、年齢がよくわからない人、特に25~40くらいに見える人に年齢を聴く時はそれ相応の覚悟というものをしておいた方が良いですよ。
かく言う私も実年齢より上に見られることが多いのが、若干コンプレックスだったりするのですが……。」
彼女は恥ずかしげに頰を爪でぽりぽりと掻いた。
確かに言動も発育加減も完全に大人っぽく見える。実際僕は20代半ばくらいだと思っていたほどだ。どうフォローすれば良いのだろうか?
「ああ。無理してフォローしてもらわなくても大丈夫です。余計なに惨めになりますので。」
的確に思考を読まれ、僕は彼女が心を読む魔法が使えるんじゃないかと疑った。
「んん。話を戻します。
私はシスターであることは話したと思いますが此処は身寄りのない子を引き取る孤児院なんです。
親が不幸にあった子や、育てられない子を放棄する人は残念ながらことに居ますので。」
だって僕より一年先に生まれただけなんだぞ。
きっと孤児院を始めたのはもっと前からだろうし、シスターとして子供達に勉強を教えたりするにはもっと前より努力を重ねてきたに違いない。
自分があとたった一年で彼女のように人々に慕われ、人々の為になることを出来るかと言われれば、逆立ちしても無理である。
多分一年以内に僕が彼女のようになれる確率は、今僕が立っている場所にピンポイントで隕石が降ってくるよりも低い。
僕は彼女と言う人間と自分を勝手に比較して、勝手に劣等感を感じてしまった。
そして彼女という人間の在り方に対して尊敬を抱き、そして少し嫉妬した。
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