短歌 7,8,9学年

口井戸大介

その日N

給食の食器をそっと片付けるふたりでカタリ無言でコトリ



雑用後青階段で涼んでるホコリが落ちるような速度で



「割と良い」と書いた紙を挟み込む借りたビデオのケースの中に



理科室のテレビはずっと鳴っていてそれに気付けた人を吸い込む



漢検のテストの前だから言った「シャーペンの芯貸してくれない?」



教室のカギが開くまで寄りかかる窓の隅から見る渡り廊下



伏せたまま僕は歩いた上履きはすれ違いざま埃を蹴った



校庭のライトが裂いた暗闇の温さで冷えた身体を慣らす



ある冬の寒さにきゅうと音を上げた旧い校舎の床を労る



問いかけをわざと遮り早合点ジョウロを奪い片付けにいく



カーテンが翻筋斗打っても気にしない今の僕らは公の使徒



「どうしようアイロンつけっぱだったかも」アレな彼女に「帰れば?」と言う



二箇月は人と人とを他人にしたはじめましてはすぐ言えるのに



引き結び薄暮を盾に仰臥する「何してんの?」はこっちの台詞



校庭を臨める窓についている髪目模様の皮脂の持ち主



月曜日筋肉痛で痛む脚悔いなき朝の口の端の笑み

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短歌 7,8,9学年 口井戸大介 @solis_quale

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