ある日N

五月雨の気配がにじり寄ってくる風呂場の窓のスキマ風から



冷蔵庫に何もないからパンに塗るチョコクリームを喰う割り箸で



弛緩した身体に染みる夜の音ぬるいくらやみつめたい静寂



食べ忘れ傷み始めたリンゴを悩んでから捨てる



腹痛と頭痛で寝るに寝られない午前三時に暖房を点ける



暴虐の限りを盡くす寒暖差自然に撚り潰されている



また会おう因果の枝のその先でそこに変わらず僕はいるから



貝を踏みパキリと割った砂浜の砂の一粒にわたしもなる



浴槽に沈む身体を起こせない 立て、立て、立て、立て



エアコンのほのかな風が床を薙ぐ寝転がってる俺と缶ごと



黎明が迫り明るくなる部屋で常夜灯からバトンが渡る




■高いヒノキの庭の上


おはスタが終わったあとに家を出ればまだ茹だらない夏の登校



1-1、2-2、3-2、4-2、5-2、6-3過ぎる6年



体育館ママさんバレーのすぐ横で君におかしをもらった夜に



マウンテンバイクのギアを2つ上げ友だちのいる団地へ急ぐ

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短歌 日常劇場 口井戸大介 @solis_quale

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