ある日N

日は雲に翳る客間に音はなく微風は温い微睡の中



開けた戸に肩をぶつけてゆがむ顔あの高さには戻れないもう



アルカリの泡は旧きを拭い去る酸を吸い吐くヒトの体を



風呂上がり寒天の月を射る夜に自販機の前小銭がなくて



僕は好き君が大好きでも何故だ? 口許に血の色がないのは



人は死にヒトは生まれる人は死に人は死にゆくヒトは生まれる



行く行かない行く行かない行く行く行かない行かない行かない行かない行かない



これはそうひとりからなる救出班握手はしないできないともいう



糖衣では隠し切れない芳しさ個室におわす三様のカミ



人知れず火葬場から帰路につく別れはとうに済んでいたから



高架下昼でも暗い教室の厚いガラスの外桜散る



ふと何もかも嫌になり部屋を出た剣を取る夢を見た気がした



前奏もなしに差し出すはいこれに苦笑いしかできないごめん

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