第4話
森の魔法使いの家、それはなんとも不気味なものであった。壁という壁はすべて葉っぱで埋め尽くされどこぞの誰かは大学などといいそうな外観、煙突からは真っ黒な煙が立ち上っている。ドアは辛うじてドアとして認識できる程度で、ノブも錆びておりあまり力を加えると取れてしまいそうであった。
ヴァイスは窓のあたりの葉っぱの間から建物の中を覗いた。中は暖炉がついているだけで、人は一人も居なかった。
ウーゴが錆びたドアノブをひねると、案外簡単にドアが開いた。鍵はかかっていなかったようである。そもそも、こんなドアでは鍵が仕事をするかどうか怪しいところではあるのだが。
ヴァイスは中を探ってから堂々と建物に入っていった。ウーゴもそれに続く。
ウーゴが机の上にある水晶玉が気になり、それに目を凝らしていると、水晶玉に人魚の様子が映し出された。おそらく、城の地下にある隠し部屋の様子だろう。
「ウーゴ、何か見つかったの。」
ヴァイスはウーゴに駆け寄ると、ウーゴが見ていた水晶玉に目を向けた。
水晶玉が映し出しているその城の地下室では、森の魔法使いが研究を進めていた。水晶玉が映し出す場所からは見えない、奥にある机でである。人魚になったエマを見ながら、なにやら手帳に文字を書き連ねていた。
森の魔法使いは立ち上がり、水槽に近づいた。この場所だと、水晶玉に映ってしまう。
「あっ!」
「森の、魔法使い。やっぱり。」
二人は思わず駆け出し、城へ向かっていった。ウーゴはヴァイスの手を引き、堀の端を走った。
例の地下室へ突入すると、そこには驚愕の表情を浮かべた森の魔法使いがいた。
ヴァイスがふっと魔法を繰り出た。驚いて動くことのできない森の魔法使いに直撃した。そのままヴァイスは森の魔法使いを押さえ込み、魔力をすっているようだった。何かの粒子がヴァイスの腕を伝ってヴァイスに吸い込まれていく様子が見える。
森の魔法使いは魔法が使えなくなるほど魔力を吸われ、もはや魔法使いとはいえないほどのただの人間になった。
こうなれば、魔法は解けるはずであった。
しかし、魔法は解けなかった。
ウーゴとヴァイスが顔を見合わせていると、背後から甲高い耳を劈くような笑い声が聞こえてきた。地下室に響くその声は、なんとも不気味であった。
「あっはははははは!」
二人が声のするほうを見ると、エマに良く似た女が立っていた。その女は手に杖を持っていた。
女は杖を振るい、ウーゴを吹き飛ばした。
「ぐはッ!」
ヴァイスが杖を構える暇もなく、女はもう一度杖を振るいヴァイスまでも吹き飛ばした。
薄らぐ意識の中で、ヴァイスは自らがその女の仲間に運ばれる様子を見た。
起きると、ヴァイスの小屋、ソファーの上であった。布団のほうをみると、服を着たヴァイスが布団で寝ていた。
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