第2話
翌日の朝一でヴァイスの小屋を訪れると、目の下に隈のできたヴァイスが相変わらずの格好で出てきた。
「なんとなく、わかった。」
明らかに徹夜明けでフラフラしているヴァイスを受け止めソファーに座らせると、ウーゴは隣に座った。
「どうだったの?」
ヴァイスは少しうれしそうな顔をしたあと、
「森の魔法使い、アイツがかかわってるのは確か。ただ、そうなってくると、ちょっと探られないようにいろいろ仕組まれてた。私の能力じゃこれが限界。」
そう言ってくてんとウーゴに寄りかかったまま寝てしまった。
少し経つとヴァイスは起き上がり、キッチンで紅茶を入れて二つのカップに注いでテーブルに置いた。先にヴァイスが口をつけ、それに続いてウーゴもカップに口をつけた。
「森の魔法使いは、悪名高い。自分の利益のためなら、なんだってするでしょうね。」
ボサボサになった髪を少し整えながらヴァイスはそう言った。
いままでに公にならなかったものでも、公になったものでも、森の魔法使いは合計で100を超える悪事を働いてきた。
最近では、市場の果物をすべてダメにして、裏から流れた安物の果物を高額で売れるようにしたり、裏の世界ともそこそこつながっているようである。
そんな森の魔法使いは、実はヴァイスのことを疎ましく思っているのである。ヴァイスは家では確かにだらしないが(とはいえこれは相手がウーゴだから見せる姿でもある)、魔法使いとしてはとても優秀で、もう少しで魔法はヴァイスのほうが上を行くほどなのである。
ただし、それとこれとはまた別の話である。
ウーゴはある程度話を聞くと、どうすれば女王を元に戻すことができるのか、と聞いた。するとヴァイスは、
「おそらく、森の魔法使いを、倒せば、なんとかなると思う。でも…。」
「でも?」
「あまり、危険なことはしないほうがいいんじゃないかな。」
好奇心が強いウーゴであっても、危険はあまり冒したくない性質である。ヴァイスの言う危険とは、本物の危険である。中途半端に大丈夫と言ってそのまま進むと死でさえ簡単に訪れることをウーゴは知っていた。
だからこそ、ウーゴはヴァイスが危険なことはやめたほうがいい、と忠告したら、必ずやめるようにしていたのである。
普段ならば、ここで終わる話であったのだが、その翌日、思わぬ事態が起こったのである。
ウーゴが朝起きると、枕元にヴァイスが座っていた。
「女王が私に、コンタクトをとってきた。魔力的なアレで、交信を。」
ヴァイスはまだ寝ぼけたウーゴにそう言うと、布団を剥いで、ウーゴの服を脱がしはじめた。まだまだ寝ぼけているウーゴの服を着替えさせたあと、ヴァイスは着ていた私服の上にマントを羽織った。ちなみに、私服というのは、白のブラウスに黒のチョッキ、黒の長ズボンである。その上から黒の全身を覆えるマント、なんとも不審者であるが、ヴァイスは特に気にしていないようである。
ウーゴはヴァイスに引っ張られるまま山のヴァイスの小屋へ連れていかれ、ソファーに座らされた。
ヴァイスは自分の部屋から古い地図を取り出して机の上に広げた。
「この小屋があるのが、ここ。それで、お城が、ここ。森の魔法使いの家、それがここ。それでね、この古い地図だと、お城と、森の魔法使いの家、これが繋がってる。今はどうかわからないけど、調べてみる価値は、あるかもしれない。でも、街の人の一部も、女王様に悪い気持ちを抱いていた人も、いる。むしろ、そっちの線のほうが、あるかもしれない。少し、裏の街を回ることも、できる。どうする?」
ヴァイスが一気に喋るのを久しぶりに見たウーゴは少し圧倒されたものの、すぐに
「じゃあ、少し裏の街を回ってみよう。」
そう言った。
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