第1話
女王が街に姿を現さなくなってからはや三ヶ月ほど経った。
市場では、
「エマ姐さんどうしまったんだよぉ!」
なんていい大人が嘆いていたりするのだが、これはこの国が異常なのであって、普通女王は街には降りてこない。
そんななか、その変化に興味を持った少年がいた。ウーゴである。
彼はごく普通の人間である。魔法が使えるわけでもないし、これといって力が強いわけでもなかった。力が強いわけではないのだが、好奇心だけは一人前に強く、ウーゴは城に乗り込もうなどと、明らかに犯罪的なことを考えていたのである。
夜も更けたころ、ウーゴはベッドから抜け出し夜の街を歩いた。
夜が更けたといっても、基本的に治安のいい街である、夜も人が練り歩く。ひとごみの間を縫って城へ急ぐ。
当然のことだが、表の門は閉まっている。ウーゴは堀に下りてふちの狭いところを歩いて城の裏へまわった。
城の裏には、昔は何もなかったはずなのだが、今になり行ってみるとなにやら隠し入り口ようなものを発見した。
これはしめたものだ、とウーゴはそっとその隠し扉を開ける。その先は階段になっており、ウーゴの目には永遠に続く下り階段のようにも見えた。
が、実際に降りてみると、そこまで長いものではなく、暗闇による錯覚だった。
最下段を降りると、そこは炎がともされた小部屋になっており、奥に水の張られた水槽が置いてあった。
水槽の中には、
人魚の姿をした女王が離されていた。
畏怖を覚えたウーゴは走って立ち去り、家に帰ってさっさと寝てしまった。
逃げるウーゴを見ながらエマは、悲しげな笑みを湛えていた。
翌日、気になったウーゴは幼馴染で魔女をやっている、ヴァイスの元へ訪れた。
ヴァイスは、
ヴァイスは「山の魔女」と呼ばれている。年齢的に言えば少女だが、大人顔負けなので、年齢など誰も気にしていない。山の魔女の由来はもちろん山に住んでいるからなのだが、その山には不思議な魔力がこめられているなんていう噂があったりもする。
「おーい、ヴァイスー、いるかー?」
ウーゴがヴァイスの家に入ると、ヴァイスは下着で手招きしていた。魔女だからどうのというのではなくて、同年代の女子に対しての感想として普通の服を着てくれと思わないこともないのだが、基本ここに訪れるのはウーゴのみであるし、そもそもヴァイスが外に出るとき以外服を着ないというよく分からないこだわりを持っているので言っても仕方が無い。
「何か用?」
ウーゴは昨晩のいきさつを説明した。そして、その件について探りを入れてほしいと頼むと、ヴァイスは快く受け入れてくれた。
「見返りとして、ちょっと、抱きしめ…やっぱいいわ。」
ヴァイスは作業をするから、と言って奥の部屋へ去っていった。ドアを閉める間際、時間がかかるかもしれないからここに泊まってもいいし一度家に帰って明日来てくれてもいい、と言った。
昔だったらば泊まったのだが、今は気恥ずかしくてできない。下着の女の子の居る家で止まるなんて思春期真っ盛りの少年には到底無理な話であった。
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