第47話 あなたに残したようじ
「取り出せないよ。」
『崩したくない、なんて言わないでよ?』
「ううん、溶けちゃってる。」
「……いたた、いだだだ!」
指輪が『はぁ?』と言うのと同時に首をひねったのだろう、私の指が右にねじれた。ひじ、腕、肩、上半身を動かし痛みを軽減しようとしたが、我慢できない痛みで品の無い声が漏れた。
下着姿で床に寝ている。『光を浴びたい。』という火の方の願いを聞いての事だ。本当は外で浴びたいらしいが、私は痴女になるつもりなど無い。部屋で我慢してもらう。
日向ぼっこの間、特にすることも無かった。ディアと指輪の水が話をしていて、目を閉じて聞いていただけなのに。
『あ、ごめんごめん。つい
「セレス、大丈夫?」
「少し赤くなっただけ、かな。」
軽いなぁ、指輪さんは。ディアが私の手を取り撫でてくれる。私のよりも小さな手なのに、何か安心するんだよね。
……あれ? ディアの胸元が仄かに光っているような?
「ねぇ、ディア? 何か光ってない?」
「セレスの近くだから光ってるのかな。」
「私の?」
「その『ギギ』だっけ? 本数を数えると分かるかも。」
指輪が『良いの? 今で。』と言い、ディアは小さく頷いたので良いのだろう。本数を数える事にする。
当たり前だが500本入りの爪楊枝だ。放っておくと戻ってくる性質から数える事など無かった。10本ずつディアに渡すと、器用に分けて持ってくれる……ディアに渡しても戻ってこないのか。新しい発見だった。
腕にすり寄ってきたディアをそのままに数えていく。
「あれ? 1本足りない? 服についてるのかな。」
「うん。」
なぜ足りないのか。周囲を探す私に下着から『影を作らないでくれ。』と不平が飛んでくるけれど無視。視線を感じ、顔を向けると至近距離で目が合った。
じっと私を見るディアが頬を赤らめながら言う。
「えっとね、セレスのつま、でしゅ。」
『ようじ、ね。』
射貫かれた。独身生活が長かった私は、頬を染めたメイド幼な妻の衝撃で白目を剥きそうになってしまう。胸が痛い……。
ふらついた私を見て、慌てたディアが支えてくれる。
至近で見る幼顔は、薄暗い部屋でも吸い寄せられるような瞳で——
「ディア……。」
「セレス……。」
「……早く終わらせて手伝ってくれないかねぇ?」
「わぁ!」
「ひっ。」
——驚いた私の声にディアが驚き、私たちの声を聞いてアンナさんが「早くしとくれ。」とだけ言い残し戻っていった。
――――――――――
「キー!」
「せめて言葉をお願いします。」
「うにににに!」
「はぁ、これでも持っててください。」
「キー……。」
――――――――――
補足
【ギギ】 残り499本
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