第46話 第一歩とは何歩目の事?

「アンナさん、足りない……。」

「ん? 何だい、増やせって言うのかい? 他と同じ金額なんだ、贔屓ひいきは出来ないよ。」


 「だよねー。」と項垂れる私に、指輪から声が聞こえてくる。


『あー、セレスが考えてるよりもヘンサイガク? は少ないみたいよ。』

「どういう事? 埋め立てするにしても、賠償とかあるでしょ? こっちの法律とか知らないし。」

「セレスは、何を言ってるんだい?」

「えっとね、えっと……セレスは、頭がアレなの!」


 アンナさんの対応はディアに任せ……頭は大丈夫だからね?


 こほん。

 指輪が、又聞きをしているような言い方をしていた。教えているのは誰だろう、下着の火かな? さっきから静かだし。


『ん? あぁ、暗いのでな。眠っていた。無駄話は終わったか?』

『あんたは服の中だもんね。』

『いくら私でも火が無い所では眠っているさ。』

「そういうもの、なの?」

『キミは、を纏っていると思えば良い。人が燃え尽きる熱を、誰が抑えていると思う?』


 定期的に火に近づいてくれれば良い、と言う下着さんは……とても尽力して頂いておりました! ちょっと暇で寝てる、と思ってごめんね?

 あ、あやまるから温度上げないでね? 場所が場所だけに、火傷したくな——


 ジュッ


『はいはい、止めときなさいって。』

『……分かっているさ。』


 ——かったので止めてもらうのは、ありがたい。でもね、下着だけ濡らしたらね? みたいでしょ? 渇くまでなんだよ?

 こんな状態をディアに気づかれたら……。


「あれ? セレス、どうしたの?」

「な、何でもない、です。」


 とても純粋な目で、くっついてくるディアから目を背けていると、の異変に気づいたらしく。私の服をパタパタと動かし、内側に風を送り始めた。

 厚意は、ありがたいのだけれどアンナさんもいるからね? 自重しようね。


「なんだい、セレスは暑いのかい? 短いスカートの服もあるよ。着替えるかい?」

「お願いします、ってディア、上は大丈夫だから!」


 服の内側から上着へ風を送ろうとするディアを抱きかかえ、座って待つ。止められた時は悲しそうな顏だったのに、抱きかかえるとニコニコして楽しそうだ。


「着替えたら、手伝いに行かないとね。」

「セレスと仕事してー、一緒にご飯食べてー。」

「一緒にねー。」

「ねー。」


 悩んでても事態は良くならないし、出来る事から始めよう。


――――――――――


「3歩進んで2歩さがる、だったかしら。」

「進んで頂かねば困りますからね。」

「風、火、水、土……本当に好かれるわね。火傷すれば良いのに。」

「焦げそうですけどね。」

「元々毛深いから、処理できて良いわよ。」

「あらあら。」


――――――――――


 被害

  セレスの□□(とても大事な事らしいので伏せられました)

  セレスの服(熱による損傷2%)

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