第39話 人の声
「……で? お三方がそろって、何をなさりたいと?」
『こいつ、聞こえない癖に生意気ね?』
『まぁ、そう言うな。我々はマノンと共に彼を助けるよう言われたのだ。』
「え? あなたたち、知ってるの?」
「セレスさん? そっちで会話されると困るのですが?」
「あ、すいません。私を助けるために来た、らしいです。」
連れられた先は、地下だった。
大きめの石に座らされ、机越しの男性と向き合い詰問……質問されている。初対面で凄んで見せた男性に、下着の火と指輪の水が反応してしまう。
私には、お風呂の湯気くらいにしか感じなかったのに、男性は歯をガタガタと鳴らし震えていた。
『ザコ。』という指輪の水さんの評価とともに温かさは消え、男性も震えが止まったらしい。咳払いして自己紹介を始めた風ギルド長だったが……威厳も何も感じなくなっていた。
今回は井戸に蹴り落されることもなく、ふわりと降ろされた。さすが風ギルド……初めから、そうして欲しい。
地下には以前と同じ四方を黒い壁に囲まれた部屋だが、足元の模様は光っていなかった。
私の両側に立つローブを来たギルド員は、無言で私の背を押し、黒い壁に近づけようとする。
壁に押しつけて何を、と精一杯の抵抗をしていると、脇腹をツンっと突かれた。変な声が出たかもしれない。
突いたギルド員を睨む私の胸倉を掴んだ手が、黒い壁から生え、引っ張られた先には、高そうな机に肘をつく若い男性がいた。役員の部屋って感じだな……
と、風ギルド長の質問に関係のない事を考えていた私に、前述の下着の火の声が届いた。どうやら彼女らは、セレスの中の私を知っているらしい。
彼女らの声が特定の者にしか聞こえないため、逐一オウム返ししている。容疑も晴れたし、早く終わらないかなぁ。
「……スさん? セレスさん!」
「うあ、はい!」
「はぁ、あなたの借金等は無利子にしておきますが、増やさない努力はしてくださいね?」
「頑張ってみます。」
『コイツ、濡らすわ!』
やめて、何か嫌だから。雫が滴る指輪を宥めつつ、ギルド長に返答しておく。
「それにしても、なぜあなたなのです? 私の方が様々な面で融通も利きますし、理解も早いと思いますがね?」
「あの……。」
「風ギルドをこれまで切り盛りしてきたのは私ですし? お三方にもご理解頂けると——」
「あの!」
―――――――――
「……ビクッ」
「……。」(じー)
「寝てないわよ?」
「追加して良いですか?」
「うぐっ。」
―――――――――
被害
風ギルド地下執務室床:消えないシミ
補足
セレスは、ぼーっとする事があります
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます