第38話 緑 連行 あのままに

 帽子マノンの前に緑色のモヤが、明るい緑色の球体を形成していく。大気が振動しているのか、すりガラスを引っ掻いたような音と静電気のパチっと弾ける青白い線が見えた。

 パッと見、キレイなのだ。でも、嫌な予感しかしない。


「マーノーン……。」


 腰を上げたまま膝と顏を地面につけた私の髪も服も球体に引き寄せられるが、魔力枯渇により震える手で押さえたてをうごかせなかった


 明緑色の球体が不規則な振動を繰り返している。帽子は風を操ってて、収束して……私でも分かる、破裂させるつもりだ。目の前で爆発が起こったら、と考えると気が気でない。

 逃げなければ、と首を動かす。


『シェレシュ、動いたら……あ。』

「あ、って――」


 音も風も止んだのも束の間、風が荒れ狂い、私の服も周りの土も吹き飛ばした。

 土煙がひどくて口を開けられない。一張羅が千切れ飛んでいく中、耐えるしかなかった。




『マノンよ、遊びが過ぎるぞ?』

『ボクは遊んでないよ!』

『この子、ずいぶんと……開放的なのね?』


 マノンたちの声が聞こえる。少し、気を失っていたのかも。

 上半身を起こした私を見て、近寄ってきていた門のおじさんたちが口笛を吹いたり、鼻の下を伸ばしていた。

 いそいそと隠しておく。あとで全員からボッタくってやる。中身はオッサンのはずなのに、セレスに引っ張られている影響か羞恥心が芽生えてしまった。


 一応言っておくと、マノンたちのおかげ? で全裸からは逃れた。帽子に指輪、そしてビキニを着用して……服を着たら燃えるのだろうか。

 火の粉が熱そうなビキニは触れても熱くない。胸部と下腹部を繋ぐチェーンが少し大人っぽさを醸し出している。パレオのような覆いも出せるらしい。

 指輪は半透明の青色で、触れると若干湿っていた。無骨なデザインだが、不思議と嫌な印象は持たない。見ていると、落ち着いてきた気がする。爛れた顏よりはマシだろう。


 恰好を整えて立ち上がりオッサンたちを睨むと、目を逸らしたが退いてはくれなかった。

 オッサンたちの後ろにある門が崩れてしまい、瓦礫になった事と関係があるのだろうか。

 「私、関係ないし。」と主張した時、ディアが瓦礫を超えて走ってきた。数名、引き連れているけれど何だろう。


「はぁ、はぁ、セレス……これ!」

「何? 門倒壊の重要参考人として身柄を拘束、風ギルド地下にて尋問を行う……? え?」

「セレス、おみやげ持ってくから!」


 手渡された書簡には文面と印が押してある。ディアへのツッコミよりも参考人って何よ。私こそ一番の被害者……。書簡を持つ手が震える。近づこうとしたディアはギルド員に止められ、私は門番たちに連行される事になった。


―――――――――――


「届けた?」

「置いてあります。」

「そう。今度は地下なのね……視えなくなるから心配ね。」

「調べますか?」

「不要よ。それよりも火と水は、しばらくに。」

「……はい。」


―――――――――――


被害

 門:全壊

 アンナの若い頃の服:全損

 村の柵:25%損壊


補足

 セレスのビキニ? は燃えません。指輪は触れると濡れます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る