第37話 私の座り心地
ありがとう、と感謝を告げ、微笑みかけると、ディアも笑みを返してくれた。
ディアがチラチラと変な二人の方を見ている。気になるよね……はぁ。
どう見ても燃えている人っぽい何かと、体中から泥が漏れ出ている何かを街に入れるだろうか。門のお兄さんたちが、ざわつく声も聞こえてくる。
「おーい、二人とも―? そのままだと村に入れないかもよー?」
『入れない、だと?』
『入れない、ですって?』
う……声をかけた途端、人間離れしている二人に詰め寄られると、流石に引いてしまう。燃えている方は、焼ける臭いまで再現され……再現だよね?
ジト目なのかさえ判断できない爛れた泥の方は、なぜか上下に動いている。もうヤダ、この変なの。
ディアを見ると、瞬きもせず泣いて——
「泣いてる!? ディア、大丈夫?」
「ふぇ? あ、大丈夫、だよ?」
「えぇ……。」
——泣いている事に気づいていない? うすら寒いモノを感じる……。ディアに声をかけようと口を開きかけた時、燃えている方の声が響いた。
『すまんな、私たちに当てられたようだ。』
『人間は脆いわね……もうボロボロじゃないの。私みたいに緩和しないと
『そうなのか? 汚れて嬉しがっているのかと思ったぞ。』
『ほぉ……ケンカは買うわよ?』
にらみ合う双方から得体のしれない圧を感じる。とりあえず白目をむいたディアを抱きかかえ、門へと走った。後ろで激突音がするけれど、努めて無視する。
カクンカクンと揺れるディアは、どこか嬉しそうだ……大丈夫だろうか。
門のおじさんたちにディアを見せると、急いで村の中へ連れて行ってくれた。門、だれもいなくなることは無いと思うんだけど。まぁ、いっか。
門が軋むほどの振動に、ため息をつく。チラっと見た後方には、くぼ地が新たに出来ていた……。あれって私が埋め直す事になるのかな、と一抹の不安が過る。
胃がキリキリ痛むような気がして胸を押さえていると、
「ごめんねー。人間と関わる事自体、僕以外は無いから。」
「何で、あんなのを寄こしたの……。」
「僕、今……こんなだし?」
熱波と蒸気が吹き荒れている……。多分、燃えている方が優勢なのだろう。アレを止める方法って、マノンには出来ないの? と思うと同時に『できるよ? 僕の方が強いもん。』という返答が聞こえてきた。じゃあ、やれよ。
「良いの?」
何が、と聞こうとした私は虚脱感に襲われる。
膝をつき、顔面から地面に倒れ込んだ私の後頭部で帽子は風を操り始めた。
「何で、私の頭で……。」
『ここが一番安定するもん。』
あとで絶対刺してやるぅ、と恨み言を漏らしながら私は気絶し、痴態を晒すことになる。
――――――――――
「終わったわね、色々と。」
「ですね。同情を禁じ得ません。」
「今後は、長ズボンになるかしら?」
「用意しますか?」
「……それとなくプレゼントしておいて。」
「はい。」
――――――――――
被害
門前の数か所(くぼ地多数、砂山1)
補足
セレスの頭に合うサイズにされたマノンは、セレスの頭が一番良い場所だったりする
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