第36話 土は……?
ひんやりした感触と、徐々に後頭部が濡れていくような感覚。
草原で寝ていたはず……晴れているから雨も降っていない。
起き上がろうとするが、魔力枯渇の影響で力が入らない。マノンー! とマノンへと助けを求めていると、聞いたことのない声が頭に響いてきた。
『ちょっとマノン、風やめて! 土で濁るでしょ!?』
『海に戻れば良いよ! しっしっ!』
『私たちの用件は聞いてるだろう?』
頭越しの会話に違和感を覚えながら耳を澄ませていると、温か——いや、あっつ!
サウナに入ろうとした時のような熱気が私の左側から迫る。マノンがすぐに風を送ってくれたのに、汗が噴き出たのが分かった。何が起こってるんだろ……つーか、マノンどいてー。
『シェレシュが焼けちゃうよ!』
『おっと、すまない。この子は、もろいのだったな。』
『あんたが熱すぎるのよ!』
『熱いのは当たり前だろう? それよりも何故、この子は寝ているのだ?』
『風を操りすぎたんだよ。』
左から腹を抱えて笑われる一方で、右からは呆れ交じりの溜め息も聞こえた。子どものように、はしゃぎ過ぎた事は認めるよ? でも笑わなくても良いよね!
再度、体を動かそうとする。起き上がるくらいは出来そうだ。震える手で
少し離れた所で復帰したディアが、こちらを窺っていた。私と目が合うと笑顔になり、小さく手を振ってくる。私も振り返して、周りを確認する。
熱を感じた左側には、上半身のみの女性が火に包まれ浮いていた。アゴが外れるかと思ったわ。腹を押さえ笑っていたのは、この人? だろう……生きてるのかな。
ひんやりした右側には、同じく上半身のみの女の子が
泥の女の子は、私が引いている事に気づき話しかけてくる。
『あんた、私の事、キモイとか
「お、思ってないよ?」(体中ただれてるし、変な音までしてるじゃん! 怖すぎる!)
『私たちにウソが通用すると
急に膨れ上がった泥水の女の子が、私に泥水を噴射してきた。顔を腕で防御し——
——出来る訳も無く、冷たい泥水を言いたいだけ掛けられてしまった。うげぇ、一張羅なのに。
マノンが風で乾かしてくれた。しかし、気持ち悪さは拭えない。変な2人は、またケンカしてるし。
泥パックが乾いたようなパリパリの土を落としていると、ディアが恐る恐る近づいてきた。
「あ、セレス……えっと、綺麗になったよ?」
褒めてくれるのは、うれしいけれど世辞にもなってないよ……。
――――――――――
「泥パック良いわね。」
「綺麗になりますね。」
「調達できる?」
「仕事が終わってからにしてくださいね?」
「うぐっ。」
――――――――――
被害
セレスの服とインナー:泥まみれ
補足
新キャラは『燃える半裸』と『泥も滴る子』でした。それぞれ火と水を司る。
マノンとは長い付き合い。
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