第34話 ルートとへいほう

 顏が火照る。私の手を引くディアが振り向き、口に指を添える……柔らか——っといけないいけない。思い出したら直視できないじゃん。

 クスクスと笑うディアに手を引かれ、食事処に戻った。


「おやおや、お熱いねぇ。」

「からかわないで下さい!」


 ドッと笑うおばちゃんたちに抗議の声を上げたが、余計に笑われてしまった。くそぅ。

 頬を膨らませながら朝の準備を手伝う。子どもっぽい行動だと思う。思うよ。


 でも……どんどん抑えが聞かなくなってきている気がする。




 片付けが終わり、朝食を貰ったところでディアが今日の予定を聞いてくる。

 今日も外、と素っ気無く言うが、手を放さない私にディアはついてきてくれた。ちょっとゴツゴツしてるけど、嫌じゃない手を再確認して門外に向かう。

 オジサンたちが冷やかしてきても苦にならない。今はディアがいるし。マノンのため息はデコピンで勘弁しておいた。


「セレス?」

「あ、ごめんね。一緒じゃ効率悪いもんね……。」


 ディアは私を気遣い、手を繋いでいてくれた。効率よりも私を選んでくれたのかな。

 そんなわけないよね……。嫌われたくない。

 なぜだろう。離れたくない? 離れるのが、怖い? 今までに無いほどネガティブな思考になっている。

 深呼吸して空を見上げるが、気分は晴れない。

 そんな私の耳に、帽子の尻尾が当てられた。今度は驚かない。


『それはの願望だから。しばらくしたら気分は晴れるよ。』

「セレス、の?」


 あ、尻尾が離れてしまった。聞きたい事が一杯あるのに。

 ディアがチラチラと、こちらを窺っている。ディアには、帽子を見て唸ってる変な人に見えているのかな……。嫌われたりしないかな、と不安が過る。


「えっと、ディア? ちょっと休憩しよ? ……やっぱり、今日は戻ろ?」

「セレス、!。」


 返答を待たずに、帰ろうと村へ体を向けた時、繋いでいた手を振り払われた。

 一瞬、何が起きたか分からず足を止めた。冷えたと感じた手を見た時、異常なまでの不安感に襲われる。


「え? あ、ディア? え?」


 ディアに嫌われた。ディアに拒否された。ディアに愛想を尽かされた。

 そんな思考が巡り、何か言わなければ、と顔を上げた時。





「セレス、おいで?」


 私は、天使を見た。


―――――――――――


「ちょっと釘刺しときなさいよ?」

「はい。若くなった方が……好みでは?」

「……否定はしないわ。」

「映像は、あちらに保存してあります。ご自由に。」


―――――――――――


被害

 主人公の心:マイナス5歳


補足

 セレスの体も若返り、12歳くらいになっている設定。身長は変化なし。精神が肉体年齢に引っ張られた、と思っていただければ。

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