第28話 温風 風邪 邪魔
「セレス、帰ろ?」
少し、呆けていたようだ。頭を切り替えて頷き、帰路に就く。
自然とつないだ手に笑みをこぼしたが、私の心は荒んでいた。
出来る事を探そう。【ギギ】を持つ手が少し痺れている。きっと慣れない運動で筋を痛めたのかもしれない。
荷を持ち、前を歩くディアに力負けしている。手のひらを開閉するが、頼りない手だとしか。
風を操り、頭上で休む帽子にも負けている。肩まで痺れてきたようで、揉みほぐしながら歩いていく。
食事処に戻った時には、頬を涙が伝っていた。倦怠感に襲われ、首まで痺れてきていた。
「セレっ!? あ、えっと、アンナさんのとこ、行こ?」
「……そうだね、行こう。」
私を見て、目を見開いたディアの提案に精一杯の笑顔で答える。あれ、笑顔って、どう作るんだっけ。なんか、怠くなってきた。
昼食を食べに来ていた客が私の顏を見て、口に運んでいたスープをこぼした。勿体無いなぁ。
ディアは私を入り口近くの席に座らせ、奥へ駆けていった。
しばらくするとアンナさんを引き連れてディアは戻ってきた。
アンナさんは目が合うと、一歩後退った。アンナさんだぁ。
「あんた、どうしたんだい? 朝は元気だったじゃないか。」
「……私、元気ですよ?」
「ちょっとおいで。みんな! 夕食まで店じまいだよ! 代金は要らないから出ておくれ!」
アンナさんに強引に手を引かれ、昨日も寝た部屋に寝かされた。ディアは部屋に来ていないようだ。
起き上がろうと思うが、おかしいな……体に力が入らない。
アンナさんは私の傍に座り、ため息をつき言った。
「あんたねぇ、顏が真っ赤だよ? 何したんだい?」
「採集して、ディアとお喋りしたくらいです。」
「魔法を使い過ぎた訳じゃないのかい? まぁ、先生を呼んだから診てもらうと良いさ。」
「でも……」と縋る私の頭に
それにしても、さっきまでのマイナス思考が嘘のようだ。腕の痺れは緩和している。若いから治りが早いのだろうか。倦怠感が少し残っているような。
「痛いのは僕だよ、シェレシュ~。」
「あはは、巻き添えだったね。よしよし。」
「顏が真っ青なのは僕が魔法を使う時に、シェレシュの魔力も使っちゃったからだけどね。」
お前か、と尻尾をクイクイ引っ張ってやる。慌てて、ずり落ちそうな帽子は良い気味だ。
ん? 真っ青?
「アンナさんは真っ赤って……。」
「ん? あ、熱あるよシェレシュ! 大丈夫?」
何か一気に疲れてきた。帽子を無視して大人しく寝ていよう。コホッ。
――――――――――
「ふん。」
「?」
「……何か聞きなさいよ。」
「え? 嫌ですよ、面倒臭い。」
「聞きなさいよ!」
「聞きましたので失礼します。」
「え? あ、待ってぇー!」
――――――――――
補足
魔力欠乏時の症状:倦怠感、意気消沈
セレスも主人公も基本的には前向きです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます