第29話 頭痛 痛覚 覚醒

「ふむ……。」

「せんせー、セレスは? セレスは?」

「うむ、寝とれば治るじゃろ。アンナには言っておくが、柔らかい物を食べなさい。」

「はい……コホッ。」


 先生と呼ばれた色々と長くひげ、まゆ、ローブが白い爺さんは、なぜか太腿を触りながら風邪だと宣った。ぶっ飛ばして良いだろうか。

 無料診断なので? まぁ、少しくらいは? 苛立ちを隠し切れなかった。こいつ、ヤブだろ。


 ディアを撫でていた手が腰より下に行ったので、ぶん殴っておいた。好き者め。

 思わず殴ってしまったが、固定ダメージは発生しなかった。先端だったら……まずかったかもしれない。命拾いしたな。


 爺さんが逃げていくと、ディアは私の枕元に寄り居た。ちょっと近すぎやしませんか。

 でも、なんか落ち着く……かも。風邪がうつっても知らないからね。

 



 「おや、仲が良いねぇ。」と夕食を持ってきてくれたアンナさんの言葉で覚醒した。

 何と言って良いか分からず、口をパクパクとさせている私を見て、アンナさんは仕草でいなした。


「ここに置いとくから、食べられるだけ食べな。後で取りに来るから。」

「あ、あの……すいません、お手伝い出来なくて。」

「治ったら、働いてくれれば良いよ。ほら、今は寝ときな。」


 礼を言うとともに会釈をしたが、頭痛で顏をしかめてしまった。素直に寝ておく。ディアは良いのだろうか。お腹減ったら起きるかな? 悪寒を感じて身を縮ませた時、ディアが再度くっついてきた。


「ありがと、ディア。」


 どうやら寝ているようで、静かな寝息だけが返ってくる。もう少しだけ眠るとしよう。

 夕食は二人分。



 あれ? 何か忘れてる? 気のせいか?

 横になったまま考え始めた所で、帽子が主張してきた。


「お腹減ったよ~。」

「あ……。」


 帽子の夕飯、どうしよう。空腹を訴える音まで鳴っているし、探さないといけない。

 はぁ、頭痛くなってきた。


――――――――――


「どう思う?」

「2日後に接触します。誤差無し。」

「火は間に合ったようね。水は?」

「明日、到着です。」

「あ、直接会いに行かないように伝えた?」

「え?」

「え?」


――――――――――


被害

 爺さんの頭 たんこぶ 1か所

 寝室の床  【ギギ】落下による損傷 修理不可能



※どういう体勢で寝ているか、は想像にお任せします。

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