第27話 1回の重み

 再度頬張り、すぐに顏を背けた私にディアは……すり寄ってきた。初回は挙動不審になったが、俺も男だ。少しくらいは耐えてみせる。

 綺麗な布で口を拭いてくれたディアをやんわりと離し、採集に切り替えた。


 【ギギ】はシャベル型のままにしている。葉を千切れば採集は終わるが、繁殖力のある植物の内、用途の無い草は根本から引き抜いておくらしい。

 シャベルで根元を掘り起こすと、土が手につかない。私は不要な植物を、ディアは香草の葉をそれぞれ片づけていった。


「ディア、そろそろ……お?」

「えへへ、いっぱーい。」

「鞄からみ出てるよ? 重くない?」


 大きな身振りでアピールしてくれたディアは、力持ちだなぁ。手が汚れていなければ撫でていただろう。

 アンナさんは水筒も入れてくれたらしい、作業の合間にディアが飲ませてくれる。もう間接かどうか、なんて気にしなくなっていた。


 シャベル【ギギ】は良く掘れた。地面に突き刺す時、サクっと持ち手付近まで刺さるのだ。固定ダメージが原因なのだろうか……触ろうとするディアに注意を促しておく。切断されたら嫌だもの。

 掘り返した土を、マノンが風に乗せ門前へと運んでいく。私が早く掘りすぎて、運搬しきれないらしい。私の後頭部を尻尾で叩きながら、土を巻き上げていった。


 二人でマノンの作業が終わるまで休憩する。私が移動すると、運び辛いらしい。シャベル【ギギ】のおかげで採集だけでなく、今見えている箇所の補修も済みそうだ。


「本当、私個人は……意味ないなぁ。」

「セレス、どうしたの?」

「……あ、声に出てた? 忘れて。」


 ボソっと呟いてしまったらしい。話題を振ってくれていたディアが話を止め、私の顏色を窺ってきた。出来る限りの笑顔で誤魔化したが、上手く、笑えただろうか。


 ディアのつぶらな瞳が、私を見据えていた。


――――――――――


「いつの間に、入れ替わった?」

「マノンは気づいているようです。」

「……そう。」

「よろしいのですか?」

「何がよ。」

「……いえ。」

かしら。」


――――――――――


被害

 門前の陥没 残り80→44%

 ディア 侵食20%


補足

 【ギギ】の状態:シャベル(取っ手20本、柄100本、残りは足掛け以下へ)

         足掛け以下が触れた物は、例外なく固定ダメージ380本分を負う


 ※『たった3回のうち、1回を使うかに躊躇する程度しかしていない主人公の葛藤』が見え隠れしたならば、成功です

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